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アニメ「新世界より」は「メロドラマ」だった

数カ年遅れで「新世界より」のアニメ版を見た。原作を読んでいないので原作読者からすると的外れな感想かもしれなけれど、とても美しかったので、忘れないうちに記録にしておきたい。

ホラーにもサスペンスやアクションにもできたプロット

少しだけネタバレをしながら説明すると、本作は、超能力を持つ子ども達が、特定の目的で管理されながら育てられ、主人公たちはその秘密を解き明かしながらも襲いかかる敵と立ち向かっていく数カ年の物語で、いかに社会を安定的に保つかという管理社会の思想を問うテーマも持っている。

約束のネバーランド」のようにホラーにすることもできたし、秘密に迫るサスペンスにすることもできたし、管理社会を風刺する社会派にすることもできたし、超能力を使ったバトルやアクションにすることもできるプロットだ。

どれを選択するかはプロデューサーや監督の裁量次第ということだろう。

メロドラマだと感じた

自分は、「本作はメロドラマだ」という感想を持った。

主人公が過去を振り返るナレーションが入るのは、映画「タイタニック」のような哀愁を感じさせるし、何より、誰と誰が恋仲かという描写や嫉妬や離別のシーンなどに割かれているシーンが多かったからだ。

離別してしまった友を思い返す描写や、思い出の中の友に助けられるシーンもあるし、忘れてしまっていた友の記憶を思い出すシーンも印象的かつ効果的に使われている。

劇伴(BGM)もアクション向けの曲より哀愁漂うスローテンポな曲の使用が多く、何より、ドボルザーク新世界より」の「家路」が合っていた。徐々に減っていく仲間と、主人公が過去を振り返るという形式が、懐かしさと哀愁を強調する。

同じプロットからテーマはいくらでも変化させられる

本作を見て思ったのは、プロットとテーマ(主題)の関係の柔軟性だ。

原作を読んで超能力バトルの色を強くすることもできたろうし、管理社会制度を問う社会派にすることも、色んな選択肢がある中で、主人公が離別していった友を想うことにフォーカスを当てたことで、とても物悲しく泣ける作品になったのだが、何をテーマにして作るのかということはプロデューサーや演出家にとって重要な決断だと思う。

自分は、このような美しい方向へ演出を振り切ったことに感謝したい。