広告/統計/アニメ/映画 等に関するブログ

広告/統計/アニメ/映画 等に関するブログ

「絶対少年」のカメラアングルと会話のテンポが好き

絶対少年」というアニメ作品を見た。前半1クールと後半1クールで舞台が変わるのだが、前半の演出がとても印象深かったので、主に前半について感じたことをまとめておく。

www6.nhk.or.jp

幻想的な空気を出すカメラアングル

・手前の人物のふくらはぎしか映らないカットで、対話が進むシーン

・人物が米粒のような極端なロングショットから、急にアップショットやクロースアップに変わる緩急

・電柱などの遮蔽物ごしのカット

・喋っている人の顔が映らないカット

・ローアングル

・オフナレ(景色が映っているけど、誰かが喋っている等)

など、変に多用すると奇をてらった画になりそうなカットがごく自然に登場する感じが良い。

・微妙に噛み合わない会話(ところどころ反応が省略されていて、リアルだがハイコンテクスト)

・変なことを言うキャラ(みく、平五郎さん)

・非日常の現象や思い出せない記憶などの不穏な設定

・終始抑揚の低い会話の声

・彩度の低い背景画

などとの相性が良い選定なのだと思う。

第1クールで超常現象の謎は、謎ではなく日常的に存在するものだ、という扱いになったので、14話目以降の第2シーズンでは、こういったイレギュラーなカットは減っている。

柔らかいが不安を煽るBGM

不協和音を使ったBGMは、”恐い”とか”緊張する”というレベルではないものの不安を感じる絶妙な柔らかさの曲が何曲かあり多用されている。

不気味な森の前で、主人公が引き込まれそうになる直前で、鳥が羽ばたく音が入ってきてBGMが途切れ環境音に切り替わるシーンがあるのだが、そういったBGMを使うべきところ、そうでないところの選定も心地よい。

心の機微を追いかける脚本

主人公は夏の一時的に地方に来たストレンジャーで、地域の同年代の子どもと徐々に距離を詰めていくのだが、その地元の友だち同士も思春期で感情の変化が進んでいく。物語の本筋は、忘れていた過去の記憶を思い出しながら主人公が超常現象を通じて自分の内面と向かい合っていく話だが、そこに周りの人の感情が上手く絡まっていきドラマチックになっている。

・ちょっと苦手な子が距離を詰めてきて何となく避けてしまう(本当はその子を避けたかったのに、”雨だから迎えに来て”と別の理由で親の車に乗せて貰うことで避けようとする)

・微妙に気になる程度の子から連絡があったけど自分宛ではなく妹宛であることにガッカリする。

・地元の中でも別荘地住まいの半ストレンジャーの子は、地元の祭りやコンビニを敢えて悪く言って自分の元都会アイデンティティを維持しようと失礼な発言をする。

・約束に誠実であろうとするもその約束が他の約束と重なって重荷になる

等々、よくここまで細かく描けたなという内容が、少ない会話で進んでいく。

第2クールでは、逆によく喋るキャラクターばかりになる。

そちらは、人付き合いが苦手な4人が少しずつ改善していく話しなのだが、自分の判断軸が無くて常に他人に媚びへつらうマッキーであったり、他人の気持ちを察せないで冷たいことを言うシゲキであったり、良い子であるべきだという謎の義務感に縛られたリエゾー等々、個性的なキャラクターが登場する。駄目な人の描き方が秀逸なのだが、自分には毒が強かった。マッキーの着信履歴でケータイのお知らせ欄が埋まるのは流石に恐い。

参考資料

こういう視聴者が少なく認知度が少ない作品でもしっかり捉えているのは、流石アニメスタイル。これによると変わったカメラアングルを多用しているのは、間を持たせるためだったという。

インタビュー中「何も事件が起きない」と言っているのは恐らく「動きのある画になるような事件がない」ということだと思う。登場人物の心情変化は毎話毎話変化があり、物語としては事件が起き続けているからだ。

WEBアニメスタイル_特別企画


サントラは在庫切れで再販の予定は今のところ無いようなのが残念だ。