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「リクープ」「窓口手数料」「トップオフ」製作委員会が黒字でなくても良い場合

アニメや映画の製作委員会でよく聞く言葉に「リクープ」という言葉がある。

英語で「取り戻す」「埋め合わす」という意味の動詞からきているようだが、
現場では”採算分岐点”的な意味で使われる。

例えば、「DVD1巻辺り15000本売れたら製作費が回収できる」場合に、
それを”リクープライン”と呼んだりする。
ここまで売れたら、出資額を回収できるのでトントンですね、ということだ。

ちなみにその場合は、「製作委員会として製作費が回収できる」という意味で、
個別の出資社にとっての採算分岐点とは必ずしも同じではない。

寧ろ普通は、製作委員会がリクープするもっと前に黒字になる。
(ちゃんと仕事ができていれば。)

通常、出資社は、純粋に投資をするだけでなく、”窓口権”を取得する。
「商品化」「DVDの発売/販売」「自動公衆送信(インターネット配信)」「海外番販」etc...

それぞれの企業役割分担して営業に行くのだが、その手間賃的なものだ。
仮に”CS放送でオンデマンド配信”の契約をA社が決めてきて、その収入が100万円あったとして、
A社は、100万をまるまる製作委員会に上納するわけではない。
例えば、10%などを”窓口手数料”として差っ引いて、残りの90万だけを製作委員会の口座に振り込むのだ。

各出資社は、必死に自分の役割の営業をすればするほど、手数料収入が増えるので、
頑張れば、その窓口手数料収入だけで、自分が出資した金額を上回る可能性がある。

そうしたら、仮に製作委員会からの配分がまだ1銭もなかったとしても、赤字にはならない。

翻って、各窓口で各出資社が、手数料収入分で出資額を回収できていれば、
仮に製作委員会としてまだ製作費を全部回収できていなかったとしても、
プロジェクトとしては、成功したと言えるケースも発生しうるのだ。



窓口手数料とは異なる概念で、「トップオフ」という言葉もある。

製作委員会でかかったコストのうち優先的に費用を回収すること。
必要不可欠な費用ではあるものの、”製作費”としては扱えないようなコスト
が”トップオフ”となることが多い。

例えば、劇場映画は慣習的に、宣伝費が”トップオフ”扱いになる。
製作委員会から、各出資社に配分する前に、
配給会社が負担した宣伝費を優先的に回収するので、
宣伝費に3000万かけたとしたら、
製作委員会の口座に様々な収入が入ってきても、1000万までは
先ずは配給会社に先に支払われ、他の出資社への配分はゼロだ。

1000万+1円になったときから初めて、出資比率に応じて配分が発生する。


製作委員会というのは、単純な「投資⇔リターン」の関係ではない。
”どれだけ自分の強みを生かして、窓口権を活用して儲けるか?”であって、
”金だけ払って座して配分を待つ”という単純なものではない。