広告/統計/アニメ/映画 等に関するブログ

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人の購買履歴は個人に帰属するのか?ー哲学的素養がマーケティングにも必要な理由

タカヒロさんがときどき、アドフラウド系の問題に無自覚なWeb広告配信業者界隈に警鈴を鳴らすときがあります。

正直なところリテラシーの高い人なので、意図を私が理解しきれないことの方が多いのですが、上記のような発言のバックボーンには、タカヒロさんが学生時代に社会学を研究していたからだと思っています。

www.mediologic.com

一方で私は大学時代は芸術哲学を主専攻、社会心理学を副専攻にしていましたし、文化人類学社会学の講義も勿論ありました。そしてその中には共通する所作があると思っています。

哲学の特徴とは「当たり前のことの背景を考察する」こと

哲学とは何か?というと凄く難しくなうのですが、他の学問と異なる特徴は「当たり前のことの背景を考察する姿勢」だと理解しています。

例えば、芸術哲学だとどういうことをするのか?と言いますと

  • 何故、芸術鑑賞と言えば美術館なのだろう?
  • 元々置いてあった場所、社会的コンテクストから切り離して「ホワイトキューブで鑑賞できる」と思っているのは何故だろう?
  • 「作品は作者の意図が込められた表現物だ」と思っているから、社会的コンテクストより作者の意図性を重視するのではないか?
  • そもそも作品に作者の意図が込められていると認識されだしたのはいつからだろうか?
  • 著作権法を見ると、近代的価値観に基づく著作権法では「作品は作者の意図を表現したものだ」という大前提で組まれているようだ

といった思考を巡らせて、普段当たり前のように習慣化していることについて俯瞰していきます。

文化人類学社会学も当たり前のことの背景を考察する所作がある

同様に、文化人類学社会学においても、人々の習慣が何故起きていることなのか?探って行きます。西洋社会と異なる文化を持つ民族のところに行き婚姻体系を中心とした習慣を分析するレヴィ=ストロースの活動が有名ですが、「習慣が何故起きているのか?」の背景を探っていくわけです。

マーケティング活動は社会の習慣と裏表

マーケティング活動は、社会や人の心理を理解しないと対応できません。

例えば、

  • 「健康のためにダイエットしましょう!」と言うのではなく「モテるためにダイエットしましょう!」と欲望を刺激してヒットしたジム
  • 個人情報の取扱に慎重になった時代に「自分の知らない間に電話番号情報を電話帳から抜き取って友だち登録する罪悪感の薄いアプリ」
  • 他人に頼られることが快感で強くなり続けたくなる盗賊ソーシャルゲーム

といったものは、上手く人々の心理構造に便乗できたことでヒットしています。

今はOKでも将来NGになることもある

先程、個人情報保護に言及しましたが、昔は住所リストを販売する会社がありました(今もほそぼそとあります)。しかし昨今では昔のように簡単に住所を得て活用することは難しいでしょう。このように社会の価値観の変化によって未来において禁止される事項があります。

気持ち悪いと言われたリターゲティング広告

あるサイトを訪問するとその商品バナーが永遠に追いかけてきたり、さっき見たECサイトの類似商品がバナーで表示されたり、個人の閲覧傾向によって広告を配信されると”少し気持ち悪い”と思うのではないでしょうか?

例えば、EUでは既にGDPRとEプライバシー規則によって、Cookie情報を元にしたマーケティング活動への規制が厳しくなっています。

https://www.ppc.go.jp/enforcement/cooperation/cooperation/GDPR/

当たり前に使っていた広告配信手法が当たり前ではなくなっていく可能性があります。

例えばECサイトについての考察

先程のEUの方針を俯瞰して考察するとどうなるでしょうか?

  • 個人の閲覧履歴は個人のものであり勝手に使ってはいけない
  • そもそも日本でも街を歩いている人が写真に写り込んだら肖像権侵害になるので「オープンに行動していることでも個人が秘匿する権利が発生している」と考えられる
  • 「本人が公にやっていることなんだから使って良いじゃないか?」というスタンスは許されなくなっていくのではないか?
  • サイトの閲覧以外にECサイトでの購買履歴も充分プライバシーではないか?
  • かつて米国のスーパーで「妊娠している子どもに本人が気がつく前に妊婦関連商品の広告を表示した」ことが事件になった
  • ECサイトでは購入履歴に基づいてサジェストされるが他のECサイトへはそのデータはインポートできない。しかし、元はと言えば自分自身の行動の履歴であり自分に権利が帰属するデータではないか?
  • ECサイトでもポイントカードであっても自分の購入履歴を自分の自由にできないのはおかしいのではないか?

といった考察ができるのではないでしょうか?

今は便利なので誰も気にしていませんが急になにかのきっかけで、

例えば、

  • 一斉にアマゾンから別のECへ引っ越しが発生したら?
  • Tポイントの活用方法に節操がない、という批判が出て社会問題に発展したら?

といったことが起きれば「購買履歴は個人に所属し個人が所有権を持つ」という風潮に変わることは可能性として想像できます。

そのとき企業側の視点では「購買履歴を沢山持っていることは何のアドバンテージでもなくなる」という日が来ますし、その日に備えて他の競争軸を今から準備しておくべきです。

「当たり前に起きていることの背景を考察できているか?」という哲学的素養がないと「昨日まで成立していたビジネスモデルが社会の変化によって成立しなくなる」ということが予測できないでしょう。


哲学の面白さについてはこちら。この方は大学時代に哲学を学びその後コンサルティングファームマーケティングに従事していました。学者が書いた哲学入門ではないのでとても取っつきやすいです。

時は「原体験」ムーブである

最近Twitterでフォローした人たちの中に一際凄い人たちが居るのですが、その中で色々な人の「原体験」を掘り出す方が居ます。

最近は自己啓発本がわりに、よく読ませて頂いています。

原体験が元になっている人の熱量

一連のリプライの中で出てくるCEOひつじjさんのエピソード「ほぼ無一文になってなお、自ら靴磨きで稼ぐ、という選択肢をとった」は、なかなかインパクトがあります。普通はできないことですが、この新年のツイートが、この人の出発点だと思います。

ジャック・マーが騙されて帰国する費用がない中、空港のスロットマシンで稼いで、しかも帰らないでアメリカの別の場所へ商売のネタを探しに飛び立った、というエピソードと重なりました。

自分の原体験を探すのは難しい

一方で、多くの人にはそこまでのバイタリティのある原体験というのはなかなかないのではないでしょうか?

私も「~によって社会の~を解決したい」というレベルにブレイクダウンされた原体験はありませんが、自分が日頃から妙に普通の人より気になってしまう点が、恐らくヒントになるのではないのかな?と思っています。

身長が低いことはコンプレックスでした

今では特に気にするシチュエーションにならないのですが、子共の頃は背が低いことがコンプレックスでした。

  • 並ぶときはいつも一番前=先生しか見えない、後ろの子が何か楽しそうにしているのも何かわからない
  • (背が低いからではないけれど)かけっこが遅い
  • (本当は別の原因だけど)モテない
  • そもそも「背が高い方がいい」という世の中の空気がある

小学校・中学校の頃は、背が急に伸びたら良いなぁといつも思っていました。

「ごまめ」

私が子供の頃に住んでいた大阪には「ごまめ」という言葉があります。「能力が劣っている人を特別扱いしてあげる」という意味です。

小学生の遊びと言えば、おいかけっこや掴み合い・なげあいが勝敗を決める遊びが中心でした。故に、「背が低い」+「かけっこが遅い」+「筋力がない」という私は、全く遊びで勝つことはなありません。自分が悔しいばかりでなく、周りからしても張り合いがないので、そのママでは全くおもしろくありません。私の場合だけ「三回タッチしないと捕まったことにならない」といった特別扱いが必要になってきます。それが「ごまめ」ということです。

私はこれがとてつもなく嫌でした

  • 一人前として扱われない
  • 何で同じ学年やのにお前の方が偉いねん
  • ちょっとはよ生まれてデカイだけやないか

という悔しさです。

周りの人からすれば、「良かれと思って」ということだと思いますが。

AKIRAの「島鉄雄」

そんな悔しさを代弁するようなキャラクターが「AKIRA」の「島鉄雄」です。彼はいつも兄貴肌の金田に助けて貰っていて、それはそれで仲の良い風景ではあったのでしょうが、いつも金田が守る側で鉄雄は守られる側という上下が嫌だという気持ちもあったのでしょう。映画を見ているときに”わかるなあ”と思っていました。

どういうことが気になってくるのか?

これが他の人の「原体験」と同レベルなのか?というと掘り下げがまだまだ足りないと思いますが、このような原体験(仮)があると、例えば以下のようなことが気になってきます。

  • 人から強制されるのが嫌
    • 「ルールだから守れ」と言われてもルールを制定した目的が理解できない間は一切従う気になれません。何の権利があって貴方は強制しているのですか?という気持ちにしかなりません。
  • 一人で決める上司やリーダーが嫌
    • 「任せることが大事」とはよく言いますが本当にその通りだと思います。プロジェクトの一挙手一投足をマイクロマネジメントしたり、チームのメンバーにアイデアを聞く前に自分でプロジェクトの方向性を全部決めてしまうタイプの上司やリーダーがとにかく苦手になります。
      • これは更に「全部決めて欲しいんですわー」という受け身のチームメンバーにイライラする、というレベルにも波及します。
  • 人と人に序列をつけるのが嫌
    • 母校の大学では嘗てミスコンが開かれようとしたことがありました。結果、左翼的な大学でしたのでジェンダー問題から中止(学園祭とは無縁の有志イベントという扱い)となりましたが、ジェンダー問題以前に、人が人に序列をつける、という行為自体も生理的に受け付けられません。
  • ”勝ち負け”への興味がなくなる
    • 人に上下をつけるのが嫌いであれば、”競争する”ことも嫌いです。誰が買った、誰が負けたという話題に興味が持てません。それぞれがそれぞれに頑張ればそれで良いじゃないですか?

ざっとこのような傾向があります。

誰か一人が強いチームよりみんなが強いチームが好き

総じて「人が人と人の間に上下を作ることがなくなって欲しい」ということになるのかと思いますが、好きな映画のストーリーのタイプにも繋がります。

有名なチューリングテストアラン・チューリングさんを題材にした映画ですが、彼は個性的な性格ながら戦時中の暗号解読のチームでドイツの暗号を理解したときの楽しそうな職場の雰囲気がすごく良い映画です。(その他はなかなか暗い映画ですが・・・)

ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーもVol1は、はぐれ者がチームを組んで対抗するストーリーでした。

また次の作品は、月へ行くロケットに関わった女性技術者の活躍の話ですが、FORTRANを学んで生き残ろう!と呼びかけてチームで生き残りをかけたり、仲間同士で協力し合うシーンもあります。

「多様性がある職場」という魅力

「リーダーが決めてウォータフォール型で開発、というスタイルではなく、多様性があって異なる意見を持つ人同士が違いを認識しながらチームとしての生産性を上げていく」

様々な得意先を担当しましたが、たまに上記のような組織やチームに出会うと楽しそうだなぁと思います。そんなチームが理想だと思っているばかりに、「多様性が大事である」と書かれた本ばかり目につきます。

ここ最近読んだ本でも類する指摘があり、とても共感しました。

グローバルで人材確保が必要な時代では多様性確保が大事

企業も変化に応じて必要な人材は変わるし、本人の適材適所な場所へ転職したり異動したりが大事。一人が全てできるのではなくチームとしてできるように組み合わせる

色々な個性があるから寛容性を持つリーダーが大事

何をしたいか・何ができるかは決まりませんが

「自分が気になること」だけがあっても、それは「稼ぐこと」に必ずしも直結しませんし、得意なこと、保有スキルとも連携していないと、自分がやらなければならないことにもなりません。

大学の授業でも衝撃を受けたことがあります。「人の心は社会的に決定する」という社会心理学の定説です。

つい最近も顕著な例を見ました。 www.u-psychiatrist.net

組織の中で周りに流されている間は、自分が不幸だとも思いません。しかし別の組織・コミュニティに行けば、異なる感性に変わります。人が生きやすい環境にするのは、制度設計だったりインセンティブ設計だったりします。

期末の利益を最大化させることに組織のKPIが設計されていれば東芝チャレンジのようになりますし、売上がKPIに設定されていれば薄利多売が起きます。こんな単純なことでも組織の空気や風土は変わるものです。

他にどのような手法があるのか、政治なのか、権力なのか、わかりませんが、 「人が人に序列をつけず多様性のある社会」が広がるべきだと思っています。

コモディティ化する”マーケティング”と、コピーライター平賀源内

最近「Webマーケティング」「SNSマーケティング」といった「○○マーケター」と名乗る方をよく見ます。実際に仕事上でも「マーケティングの話をします~」という前置きもよく聞くようになりました。

一方で、日々の仕事の中で「マーケティング(狭義)」の限界も感じます。

マーケティングフレームワークについて

マーケティングフレームワークはすっかり一般化した

  • PEST分析
  • 3C分析
  • SWOT分析
  • 商品ライフサイクル
  • ライフタイムバリュー

etc...

といった用語を日常的に使う人が、SNS上でもリアルな取引先でも増えた印象があります。「外資コンサルタントが教える~」といった類の本が数多く出版され誰もが一度は読んだことがあるのでしょう。

フレームワークの限界

広告代理店の本業は、媒体枠の調達であり広告表現制作です。マーケティング戦略部分は通常、広告主側にいるマーケターがオリエンテーションとしてまとめます。しかし、往々にして”代理店さんの自由な発想を妨げたくない”という理由で、マーケティング戦略部分も白紙の状態でオリエンテーションとなるケースも多々あります。そういうときは、広告代理店側でもマーケティング戦略をまとめることがあります。1

その日々の中で感じるのが、マーケティングフレームワークモデルは恣意的である ということです。

SWOT分析の「強み」に何を入れるか・入れないか、資料作成者の意のままです。

「シェアが伸びていない」という事象を 「伸び代がある機会である」と捉えるか 「競合が伸びてきた驚異である」と捉えるか、 資料のストーリーの持って行き方次第です

フレームワークを埋めるだけなら特に知識は要らない

更に「フレームワーク」の危険なところは、特に勉強していない素人でも書き方を知っていれば書けてしまうということです。

調査分析の支援業務なら

といった能力や経験が必要なので、今日明日、本を読んで先輩のカバン持ちをしていた人が実行できることではありません。

一方で、SWOT分析マスを埋めることであれば、広告主にヒアリングしてオープンデータを漁れば、それっぽく埋めることはできます。

必要なのは解決策を作る力

コピーライター平賀源内

嘘か本当かわかりませんが、「土用の丑の日」に、元気が出るからうなぎを食べろ、という風習を作ったのは、平賀源内だと言われています。

結果、うなぎが絶滅危惧種になるなど消費が歪になってしまったことは失敗と言わざるを得ませんが、今までうなぎを食べる習慣がなかった人を振り返らせたという意味では、素晴らしい仕事だと言えるでしょう。

これがコピーライターの仕事の一つです

フレームワークで「土用の丑の日」は出てこない

誰もが注目していなかったうなぎについて、江戸時代の人が、SWOTでも3CでもPESTでも良いですが、何かフレームワークモデルで分析したところで、注目されていない興味を持ってくれる人はいないという月並みな結論が出てくるだけだったのではないでしょうか?

  • うなぎを食べると元気が出るってことにしちゃえ
  • 食べるきっかけに特別な日にしちゃえ

という結論が自動的に出てくるとは」思えません。

  • 夏バテに注目してから夏バテで苦労している人がこんなに居ます!ここにマーケットがあります!
  • うなぎは夏バテに効くエビデンスあります!

といったことを後から裏付けることはできますが、その逆はできません

人の価値観を変えることはできているか?

今まで振り向いてくれなかった人を振り向かせることが売れるようにする仕組みでは重要です。そしてその解決策は一つではありません。

例えば、iPhoneはボタンを無くしたから売れたのでしょうか?そんな端末は以前にもありました。「ボタンが邪魔だと思う人が一定数居る」までは調査データのとりまとめで思いついたとしても、実際に買わせるにはスワイプする行為が何かカッコ良かったとかアップルコンピューターはデザイナーなどイケてる人が支持してるといった憧れも必要だったはずです。2

プロダクトが解決することもあれば、キャッチコピーが解決することもあれば、デザインが解決することもあれば、社長のカリスマ性が解決することもあります。

しかし、フレームワークの整理からはいずれの解決策も登場しません。フレームワークは解決策を思いついた後の説得方法だという順番を間違えてはいけないでしょう。

コンサルタントとアドバイザーは異なる

実行力のあるコンサルタント

所謂戦略系コンサルティングファームの人は経営層と対面していますので、執行役員以下と相対する広告代理店では余り現場でお目にかかることがありません。

一方で、「~コンサル」といった個別の事業の専門家の方とはご一緒することがあります。総じて言えるのはコンサルタントは実行しているということです。

  • ヒアリングが必要ならフットワーク軽く聞きに行く
  • 事業計画のシミュレーションを作る
  • クライアントの縦割り組織を渡り歩いて根回しする
  • 足りないパートナーが居たら見つけてきてアサインする

といった解決策を策定することにコミットしていて、マーケティングフレームワークによる説明などは使っていない申し訳程度に入っているだけです

「年商○億」の人は、コンサルタントですか?アドバイザーですか?

  • 自分はもう充分稼いだんで支援する側に回ります!
  • ~コンサルするんで有料セミナーやりまーす!

知見の共有やTipsの共有はセミナーでも勉強会でも積極的な人が共有してくれますし、支援会社の人が業務として本を出したりWhitePaperにしてリード獲得しています。

フレームワークに限界があるように、残念ながらマーケティングにおける解決策のフェーズは再現性がないことが殆どです。踊らされないで実施経験を積むしか今のところ手段はないのでは?と思います。

「狭義のマーケティング」(=マーケティングフレームワーク)はかなりコモディティ化してしまいましたが、発言者が本当にコンサルタントなのか?ただの安全な立場から語るだけのアドバイザーなのか?見極めが必要でしょう。


フレームワークは戦略コンサルティングファームが作った説得手法に過ぎません。一方で、広告代理店のクリエイターも、プロモーションの一部しか担当していないのにすべて自分が解決したかのように本を書きます。

マーケティング業務について知るには、広告主側の本を読んだ方が良いでしょう。

→ 「確率思考の戦略論」の方が面白いのですが(ディリクレ分布やポワソン分布が出てきます)、組織改革しないと進まないものは進まないという現実は常に意識した方が良いでしょう。

→ 有名な広告制作会社に居たこともある人で今は広告主側にいる人、「宣伝費は自分のお金がだと思え」という例えはよく使わせて頂いています。

→ 森岡さんの別の本でも書いてありますがマーケターは「コスト」や「キャッシュフロー」「生産体制」も意識しなければ務まりません。好きなアドバイスをして終わりではなく、それが量産できるか?納期はいつか?そんなことも必要な視点です。


  1. 広告代理店の場合は、組織改革・販売チャネル改革・ポートフォリオの変更・価格改定といったことまでは踏み込まず、特定のブランド(商材)のプロモーション戦略策定が中心です。たまに商品開発としてネーミング・パッケージ・フレーバー開発”協力”があります。

  2. 誰もちゃんとなんでiPhoneを買ったのか?最初に買った人や、後追いで買った人を調査してませんね。そういば。

広告代理店の仕事は「マーケティング」ではなく「プロジェクトマネジメント」である

広告代理店出身の人が記事で「マーケティング」と言うとき、大抵は「プロモーション」のことにとどまっています。ビジネスを経験したことがない学生にとって、広告代理店がマーケティング業務をしていると誤解して入社してしまのは良くないことだと思います。

広告代理店は「マーケティング支援会社」である

最近極めて赤裸々な本が出版されました。広告代理店の営業マンの実感からも全くズレを感じない優れたヒアリングレポートです。

この中で「事業会社」と「支援会社」という区分がされていましたが、言い得て妙な表現だと思います。

例えば、広告代理店ができないマーケティング業務

  • ブランドのポートフォリオを変更する(生産する商品ラインナップを削る)
  • 価格設定を変える(値引きしない)
  • 流通チャンネルを変える(卸との条件を変える)

このような業務は「事業会社」が行うことで、せいぜい関わるとしたら「経営コンサルタント」が協力する程度で、「広告代理店が絡む」ということはありません。

マーケティングを4つの軸に分けることがありますが、 - Product - Price - Place - Promotion

このうち広告代理店が関わるのはプロモーション「だけ」となります。 1

何ならプロモーションの中の一部しかやってない

もっと言うと、 - 調査 - 店頭プロモーション - 広報

など、プロモーションの領域であっても、事業会社から広告代理店を通さずに、専門の支援会社に発注されることのケースの方が多いとすら言えます。2

そもそも「利益相反」している

マーケティングを担当している」と嘯く広告代理店の人にとって最も厳しい点はここでしょう。

広告代理店は、 - ペイドメディア(広告枠)を調達したときの媒体社へのバックマージン(コミッション) - 広告等に使用する制作物(例えばテレビCM)やキャンペーンの運営管理などの代行業務における管理手数料

などが収益源です。

本当にマーケティングをする事業会社の立場であれば、広告を買うお金は一円でも安くしたいですし、広告制作も自社内で制作して完結し人件費に見合うなら外注する必要はありません。

となると、自ずと広告代理店と事業会社は利益が相反することになります。3

では一体、広告代理店は何をしているのか?

プロモーションにおける - 広告クリエイティブ制作 - 広告枠買付け - キャンペーンの設計や事務局業務

が主な仕事です

実行するのは別の人

ただし、広告代理店の中に「デザイナー」や「監督」はいません。 - 広告クリエイティブ制作→制作会社(例えば、葵プロモーションなど) - 広告枠買付け→媒体社(例えば、フジテレビなど) - キャンペーンの設計や事務局業務→各種プロモーション協力の会社(いっぱいあります)

と全て実行部隊は外部にいます。

行っているのは「プロジェクトマネジメント」

事業会社と制作会社・媒体社・協力会社の間に入って何をしているのか?というとプロジェクトマネジメントです。

  • 事業会社の中で決裁権限を持つ人は誰か?
  • その人にプロモーション企画を通すために必要なリサーチや資料は何か?
  • 宣伝予算の中で最適な媒体費・制作費の配分は何か?
  • 商品ターゲットを踏まえた制作物のディレクションは?
  • キャンペーンスタートまでの進行スケジュールは?
  • 媒体社の広告原稿審査・タレント事務所の意見・監督の意見など途中で意見が割れそうなポイントは?

といった、広告制作の関係者の利害関係調整とリソース配分とスケジュール管理、という業務になります。全て事業会社で内製できるのであればしてしまってよいのですが、4 手が回らないので広告代理店に外部発注している、ということになります。

何のスキルを持ちたいか?

大企業であればあるほど広告代理店への依存度が高く、ハズキルーペのような特殊な事例を除けば、テレビタレントを起用した広告制作は、広告代理店や制作会社でないと企画立案の機会はないでしょう。一方で、マーケティングをしたくても大企業の中ではほぼ関係者への説明で一日が終わる、ということも稀ではありませんし、事業会社では定期的な異動もつきものです。

世の中にでるニュース記事ではついつい広告会社のクリエイターなど一部の職種の人の露出が目立つため、大半の人が何をしているのかはつかみ取りにくいと思いますので、少しでも学生の参考なれば幸いです。


その他、最近の中でマーケティングの実態がわかりやすい本がこれです。事業部を畳んだり、経営コンサルティングに近い領域もマーケティングの仕事です。


  1. 製品の開発コンセプトで協力することはありますが、実際にどのような材料で?何なら量産化できて価格も抑えられるのか?そういった製品企画開発の本流ではなく、女子高生をアサインして意見を貰った、とかそういう関わり方が限度です。

  2. もちろん、統合的なキャンペーンという形で「一時的に」係るケースはあります。

  3. 因みに、少しでも広告代理店に払うお金を少なくするために、Web広告用のバナーを内製したり、TVCMの納品用テープのプリントをスタジオに直発注したり、TVSPOTの買い付けで相見積もりをして1%でも多く調達を値引きする、など様々な企業努力を事業会社はされています。

  4. 因みに人数の少ない中小企業ほど全て内製でやってしまいます。記者会見の会場抑え・進行台本制作・メディアキャラバンなど自社でやってしまうところは少なくありません。

Markdown エディタ には、Visual Studio Code が最適

最近のMicrosoftは凄い。

以前は使い難いし余計な操作を勝手にするユーザビリティの低いOfficeソフトのイメージしかなかったMicrosoftですが、Windows10が出てからというもの(というよりも、サティア・ナデラになってからということだと思いますが)あらゆるツールが使いやすくなってきた気がします。

Markdown について

Markdownについては、幾つか記事を書きました。

文書作成における便利さを一言で言うと、ヘッドラインやリスト化がキーボード操作だけで完結する、ということでしょう。

yyhhyy.hatenablog.com

MarkdownエディタとしてのVisual Studio Code

一方で、つい最近まで MarkdownSublime Text などで記述し、作ったmdファイルをコマンドプロンプトからpandocでPDFやWordに変換していました。

しかし、いつの間にかMicrosoftVisual Studio Codeがとても使い易くなっていて、メインPCをWin10に変えたのを契機に乗り換えました。

Visual Studio Code のインストールは本家から。

code.visualstudio.com

Visual Studio CodeMarkdown

プレビュー画面は出すことも出さないこともできます。右上のボタンを押すだけ(コマンド操作でも良い)。画面の表示も見やすい

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Visual Studio CodeMarkdown を PDF や Word にする

このサイトがとても参考になります。

[Visual Studio Code][Windows] MarkdownでPDF/HTML/DOCXファイルへの変換方法とチートシート | Gabekore Garage

PDF

PDFについては、Visual Studio Code に、「Markdown PDF」のプラグイン拡張機能)を検索して入れるだけ。

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変換するときは、 右クリックして「PDF」を選択しても良いし、

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Ctrl + Shift + P でPaletteを表示させて、「export」と入力しても出てきます

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結果はほぼプレビューの通り

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Word

Word ファイルの変換には、先ず事前に「pandoc」というソフトをインストールしておくこと。

qiita.com

pandoc は、RでPDFに変換するときにも使いますし、とにかくインストールしておいて、環境PATHも通しておくと何事にも便利です。

次に、Visual Studio Codeに、「vscode-pandoc」のプラグインを追加して終了。

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変換するときは、 Ctrl + k を押し

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p を押して、docxを選ぶだけ

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Wordの場合は、タイトルも変換されます。

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Markdown は、プラグインで様々な言語の表記に対応しますので、SQLファイルを開くときにも使えますし、汎用性が高い上に、過去あった「Visual Studio」とは違って、Visual Studio Code は、起動が断然に早い点でもおすすめです。

ブランディングで売上拡大という幻想

宣伝部やプロモーション部或いはその仕事を請ける広告代理店、様々な人が「自社製品をブランディングして売上を拡大したい」と思っていないだろうか?

だが そもそもブランディングして売れる数を増やすという発想自体が間違っている

プレミアムなブランディングについて

プレミアムブランドは利益率重視であって収益重視ではない

最近読んだ『マツダBMWを超える日』という本の中に重要な指摘があった。

フォルクスワーゲンの収益の33%は台数では21%のアウディが稼いでいる

ここに全てのヒントが集約されていると言っても過言ではない。

プレミアムなブランドは売れる数こそ少なくても、利益率が高いため多額の利益を残すのだ。

STPは売る数を減らす行為

ブランディングしたいんです」「他社と差別化したいんです」と広告主が言ったとき、「ターゲットを絞って尖らせましょう!」「人々は1つのパーセプションしか憶えられません!」と広告代理店のマーケターやクリエイターは言う。

しかしこれは広告主の応えになっていないのではないか?「いやーそんなもったいないことはしないでよ。みんなに買って欲しいのよ」「みんなに売れる良いメッセージが欲しいのよ」と。

ブランディングの基本であるSTP(Segmentation、Targeting、Positioning)は、その名にある通り、市場を分割する。必然的に狙う消費者の数は絞られるし、売れる数も減る可能性がある。

だが、広告代理店の人も「売れる数を増やしたい」と思ってSTPを提案している。これはどういうことだろうか?

マスブランドについて

リーチの問題との混同

何故、「ブランディングしたいんです」という宿題に対してSTPを提案するのか?何かすれ違っているようでいて、いったい何がすれ違っているのか?

  • 広告主の思う「ブランディングしたい」→「みんなに好かれたい。(売れる数は維持もしくは増やしたい)」
  • 広告代理店の思う「ブランディングする」→「価値を理解する人に正確に情報を伝えて買って貰う。(情報が届いていなかった人に届けば売れる数は増える。)」

図解した方がわかりやすいかもしれない。 f:id:yyhhyy:20180909212645p:plain この考え方は一理あるのだが、あくまで特定の人に刺さる商品価値を持ったプレミアムブランドが取れる戦略だ。広告主側が「みんなに好かれたい」と思って作っている商品では当てはまらない。

実際にはこういうことだ。 f:id:yyhhyy:20180909212656p:plain 今まで売れていなかったのは、宣伝で言っていることの意味がわからなかったのかもしれないし、そもそも広告の投下量が少なかっただけかもしれない。

逆に、既にこれまで充分にメッセージ開発もし、多額の広告費もかけていたというのであれば、それはもう限界まで来てしまっていてこれ以上伸ばせない、ということでもある。

殆どの商品はマスブランドである

「みんなに好かれたい」「ターゲットを絞りたくない、もったいない」ということであれば、それはマスブランドである。マスブランドの場合は、好意度の獲得量(Preference)が重要になってくる。 f:id:yyhhyy:20180909212711p:plain コモディティ化した市場の中で、競合より良い印象を、競合より多くの広告投下をし続けないことには、忘れ去られてしまう。レッドオーシャンだから販売管理費はかかるのだ。

まとめ

すれ違いが起きる仕組み

得てして広告代理店の人は「ブランディング」という言葉を聞くと「プレミアムブランド」の戦略を描いてしまう。全てのブランドが「ブランディングすれば下駄をはかせられる」「高い価格でも買って貰えるようになる」そう勘違いしているのだ。

しかし実際には、ポルシェやAudiのように尖った商品でなければそういったことは起きない。

彼らの心理を予測すると、ついつい贅沢なプレミアムブランドみたいなかっこいい仕事に憧れてしまうので、全ての商品ブランドに対して「差別化してターゲットを絞りましょう!」などと応えてしまうのだろう。

(テレビ+Youtube)×タレントニコパチ に愚直にお金をかけるべきであって、競合ブランドに勝ちたければこの図式に対して競合ブランドよりも努力を注ぎ込むべきだ。それ以外は怠慢である。

勘違いさせてしまう代表例

もう1つ、勘違いの原因がある。

広告代理店の人は何故かアップルコンピュータ製品が好きだということだ。デザイナーでないのにアップルコンピュータ製品を使う人もいる。

以前、アップルのファンについて書いたことがある。

yyhhyy.hatenablog.com

初期のMacintoshファンや実利として必要としているデザイナーが買っているMacPro系がある一方で、MacBook Airや新しいMacBookなどの廉価モデルを買っている人や、iPhoneを買っている人はマス層だ。Macintoshは一見プレミアムブランドでありながらマス市場も獲得しているように見えるが、実際にはマスブランドであり、大量に広告投下をすることでも有名だ。

では何故ブランドだと感じるのか?というと、クリエイターが指示していることが好感度に貢献しているだけだ。

Appleはプレミアムなブランドだ」と勘違いしているが、「Appleは好感度が極めて高い」と言った方が現実に即しているだろう。

一度も広告をしたことがないフェラーリなどのプレミアムブランドや一部の広告枠にしか出さないラグジュアリーブランドとは異なる存在なのだが、混同してしまうのだろう。


プレミアムブランドについて参考になる本

Preferenceについて参考になる本

TreasureDATAとGoogleスプレッドシートとGoogleDataStudioでダッシュボードもどきを作る

先般とても良い本を読みました。

この記事は殆どこの本の紹介のようなものです。

課題

殆どのマーケティングセクションの人はSQLを学習する気力がない

SQLこそが、データベースを操作する為に先人が作ってくれた取っ付き易い便利な言語です。故にSQLに対応していることそのものが使い易いということなのですが、それでも多くのマーケッターは「SQLを使わないと使えないツールなんて使えない」と言います。

往々にして日本のマーケティング部門は「マーケティングの勉強をしてきた専門家が集まる部署」ではなく「たまたま流れ着いてしまって、なんならいつかは異動する予定がある人が集まる部署」ということが多く、予備知識を持たずに現場投入されるのが現実です。

そのような中で、コマンドプロンプトやターミナルを使った操作やRやPythonを使った処理は勿論、SQLの言語を習得するというのは、ある程度マーケティングに興味を持たない限り難しいと思われます。

そういう現実を踏まえたとき、拡張性こそ薄いもののグラフィカルユーザーインターフェースで提供される「GoogleAnalytics」や「GoogleDataStudio」といったツールは、非常に重宝されます。

殆どの人はグラフの載ったレポートしか見ない

よく、エレベータープレゼンですとか、一枚絵プレゼンですとか、一瞬で一枚で説明することの大事さを説くビジネス書があります。そのことの是非は置いておいて、実態として世の中の多くの人はグラフでビジュアライズされたレポートを見て直感的に理解するもので、エクセル表を見て自分で煮るなり焼くなりして下さいという状態では見てくれません。

故に、「TreasureDATAから抜けますよ?」はもってのほか、吐き出したデータをグラフにして初めて見てくれます。これは、相手が意思決定層かどうかに関わりません。一般的に段落以上のボリュームのあるテキストは読まれないと認識しておいた方が良いでしょう。

おすすめの使い方

TreasureDATAからGoogleスプレッドシートに吐き出す

GoogleスプレッドシートExcelのWeb版だと思っていると損をします。データを連携させるために極めて便利なツールです。

初期設定

TreasureDATAにGoogleのアカウントを登録します。これで、出力方法としてGoogleスプレッドシートが使えるようになります

https://docs.treasuredata.com/articles/result-into-google-spreadsheetdocs.treasuredata.com

スプレッドシートへの吐き出し

画面を見て素直に入力して行けば終わります。先にスプレッドシートを用意しておき、作ったスプレッドシートを吐き出し先に設定します。

qiita.com

スケジュール設定のcron形式についてはこちらを参照して下さい。

docs.treasuredata.com

http://yebisupress.dac.co.jp/2016/02/25/treasure-data-to-spreadsheet/

スプレッドシートからの計算

GoogleDataStudioでのグラフ化

この2項目については既に先程の本に記載されているのでそちらを参照して下さい。

「transpose関数を使う」など細かなテクニックにまで言及されており、とても重宝します。

www.relief.jp

何が便利なのか?

TreasureDATA → Googleスプレッドシート → GoogleDataStudio

というステップを踏むことで、TreasureDATAのスケジュール設定の度にスプレッドシートが自動更新され、GoogleDataStudioも更新ボタンを押すと自動更新してくれます。これによって、グラフ化までを毎週自動的にやってくれるので、見る指標(KPI)さえ決まっていれば、レポートの作業は、GoogleDataStudioをPDF印刷してPDFにして配るだけです。

所詮ダッシュボードでKPIを見る意味は、何か異常が起きていないか?を監視するだけで、特に生産的ではありません。全て自動化しましょう。

余談:会議について

  • 一枚目でプレゼンしてくれ
  • 文字を減らしてビジュアルに説明してくれ

と当たり前のように言われるため、そういうものだと勘違いしている人もいるかもしれません。しかし、本質的に理解をしたいなら、抜粋されたグラフと印象的な一言ではなく、きっちり構造化された文章を読むべきだと思います。

www.businessinsider.jp

印象的なプレゼンスライドというのは、誰かを説得したり鼓舞したり煙に巻いたりする為に行うもので、バイアスがかかっていることがあります。自分がちゃんと理解したいときにはスライドではなくテキストをよく読む方が良いでしょう。


レポーティングに関して良いことが書いてあったなと思う本

Googleアナリティクスに関して詳細にテクニックが載った本。殆どのGoogleアナリティクス本が、触ってみたらわかるレベルのことしか書いていないなか、本書は「そんな機能もあったのか」ということまで書いてあります。

グラフの見せ方については色々な本がありますが、このGoogle社員の本が一番コンパクトにまとまっている気がしました。何故Googleは青色を使うのだろうか?と思っていた謎も、色弱色盲への配慮だったとわかり、大変教訓になりました。