広告/統計/アニメ/映画 等に関するブログ

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広告代理店の営業マンは何を売っているのか?

大手広告代理店の電通で新卒社員が過労自殺をしました。

その事件を受けて色々な人が”広告代理店が何故長時間労働しているのか?”について情報発信しています。 実態としてその通りな面はあると思いつつ、若干のミスリードもあると思っているので、自分なりの意見をまとめました。

広告代理店の実態を書いたブログエントリー

どちらも既に業界には居ない人ですが、レガシィな代理店はその頃から変化はなく、大枠の実態としてはその通りです

jnakagawa.blog.jp

monthly-shota.hatenablog.com

上記のエントリーはどちらも実態を把握しているものと感じます。

しかし、現場が日々目指している”ちゃんとした営業マンの営業スタイル”は必ずしもこのような世界ではありません。

特に、クライアントの言う通りに何もかもを調整して対応することは、クライアント・代理店そして発注先の媒体社や制作会社、全てに対して負の連鎖しか生みません。

人は一緒に乗り越えた苦労は覚えているがピンチを助けてくれたことは忘れがち

先輩であり上司である人に教えて貰った教訓です。

「あの時はピンチでしたね~」と苦労を共有して乗り越えた案件というのは、クライアントと広告代理店の絆を強くします。

一方で、値引きをしたり、今回だけ特別対応ですよ?と短納期で納入したり、と一方的に広告代理店及びその先の媒体社・制作会社側だけが苦労して対応した案件というのは、その瞬間は凄く感謝されますが、時間が経つと不思議と忘れられてしまいます。

それどころか

  • 「前回は、このスケジュールで何とかなったじゃないですか?なので今回も!」
  • 「前回のあの金額が残ってしまっていて、なかなか値上げをするには追加メリットがないと。。。」

などと最初から短納期が設定されたり、最初から低収益でスタートしてしまいかねないのです。

そもそも”値引き”も”短納期対応”も”とても失礼”である。

”値引き”は自社の利益を削って対応するのですから、自社が決断すれば誰にも迷惑をかけないと思いがちですが、

  • 定価で購入した別のクライアント
  • 商品価値を維持したい媒体社・制作会社

に対して失礼です。

もし同じ案件に対して、A社には値引きして売っていたのに、B社には値引きせずに利益確保していたことが、 何年も経った後でB社に情報が逆流したら、B社の宣伝部担当者はどう思うでしょうか?B社担当の営業マンはどう対処すればいいでしょうか?

”短納期対応”は、もっと失礼です。

広告代理店は自社で作業を解決することはできません。

”明日までに修正お願い!”と言われて、企画書の文言修正であれば広告代理店内で済む話ですが、グラフィック案の修正であれば外部のデザイナーが広告代理店のクリエイターのディレクションの後に徹夜で作業をしているのです。

広告代理店が売っているのは、”媒体・コンテンツ”と”人”である

広告代理店のビジネスは大きく2つに分かれています。

  • 広告媒体・タレント・キャラクター・イベントなど値段の決まっている媒体やコンテンツの代理販売
  • 社内のスタッフ・外部スタッフなど”人”

1つ目の説明は不要でしょう。2つ目について説明します。

ちゃんと商品が売れるような広告表現が出来る優秀なクリエイターの人生は限られています。彼等の貴重な仕事時間を色んなクライアントに切り売りするのが、営業マンのしていることです。

一般的商品に例えると

  • 仕事の出来るスタッフに効率的にアウトプットして貰う = 生産効率を上げる
  • 1回辺りのスタッフの仕事をできるだけ高く請求する = 商品単価を上げる

の2つを意識して会社に利益を残すことが営業マンの役割です。

日々どういう意識を持っているのか?

  • ほんとにその作業は今、依頼する必要があるのか?
  • この案件はスタッフの経歴として誇らしいものになっただろうか?
  • スタッフのした仕事をちゃんとクライアントに説明して評価して貰えたろうか?
  • このプロジェクトはちゃんと利益が確保できて、次回も継続できるだろうか?

などを考える必要があります。

利益を確保することはクライアントの為である

スタッフを効率的に回して利益確保することが会社のミッションであると理解している管理職は、利益の出ていないプロジェクトからスタッフを外し、時に担当の営業マンの数も減らします。

値引きに値引きを重ねてスタッフを安売りしてしまったプロジェクトは、人員不足になり最終的に崩壊し、その取引は終わります。

その時に広告代理店の営業マンは困りません。何故ならまた別のクライアントの仕事があるからです。

一方でクライアント側は、優秀なスタッフが抜けることでアウトプットのクオリティが下がりますし、最終的に広告代理店に請負うだけの人員が確保されない場合は取引を別の会社にゼロから委託せざるを得なくなります。

クライアントの伝書鳩な人は自分が可愛いだけ

人は誰かに頼られたり感謝されたりすることに快感を覚えるものです。 「今回はありがとう!」「お願いなんですけど。。。」と言われると、”頑張ろう!”という気持ちになります。

しかし動き出す前に、 その無理なスケジュールや予算を請けることが、”会社として正しいことか?”、”長期的にクライアントの為になっているか?”と一歩考えてから踏み出さないと何もかもが崩壊します。

電通で自殺者が出てしまった遠因を作ったのが、現場の誰かなのか?組織の構造的欠陥だったのか?いずれにしても、正常な営業スタイルは維持できていなかったということでしょう。