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企業のミッションステートメントは社員を効率的に働かせる仕組み

経営者の本やビジネスモデルの本、或いは、社員のチームワークの本を読んでいると、「企業のミッションを決めること」をみんな重視していることがわかる。

しかし、ミッションを決めたことでどのような効果を望み、その裏で作動している仕組みについての洞察は余り多くないようにもみえる。ミッションステートメントを作るにあたってとても重要な視点なので、著名な企業の例から簡潔に確認してみたい。

1)リクルートのミッションステートメントはチームワークに貢献する

リクルートは外から見ていると「求人広告から始まりスーモ、ゼクシィ、ホットペッパーなど広告媒体を新たに作っていく会社で、3年位で転職していくモーレツ社員の会社」というイメージがある。利益に向かってがむしゃらに新規事業を立ち上げて、見込みがあると思ったら一気にマス広告でカテゴリーナンバーワンを取っていき、社員同士も競争が激しい会社、、そんな荒々しい企業だ。

ところが、最近読んだ本を読むと、社内は全く違う空気であることがわかった

社会貢献活動というミッション

リクルートのミッションステートメントとして有名なのは、”ビジネスモデル”として紹介されているこの言葉だろう。

「最適なマッチングで世の中の“不”を解消しクライアントとユーザーに新たな価値を提供」

https://recruit-holdings.co.jp/assets/pdf/annual/2015/annual_2015_jp_2.pdf

先ほどの本から要約すると、このミッションステートメントには2つの意味がある。一つは、「顧客のお困りごとを”どの予算を付け替えてでも欲しいと思うか?”まで掘り下げて徹底的に確認せよ」という意味で、これによって失敗する新規事業というものが減るということで、いかにもリクルートらしいのだが、もう一つの方が意外であった

「社会のお困りごとを解決する社会貢献企業であるという自負を持つ」という意味もあるのだ。

社会貢献活動だと社員が信じることで「社員同士の共有」が生まれる

この2つ目の効果は絶大で、リクルート内では社員同士が積極的に”良かった情報”、”上手く言ったケーススタディ”などを共有しあっているのだという。俺が一山当てて抜け駆けしてやるぜ!ということではなくて、お互いに社会をよくするために知見を共有しあう文化があるのだという。

常に新規事業を立ち上げ続けて拡大するリクルートにとって、失敗しないビジネスモデルを作るには社員の経験が共有され受け継がれていく必要がある、そのような文化が作れたからリクルートはいつまでも枯れずに新規事業が生まれてくるのだ。

2)電通鬼十則は営業のサービスクオリティを維持する

何度読んでもよくできていて無駄のないミッションステートメント電通鬼十則だ。

公益財団法人 吉田秀雄記念事業財団 | 財団の概要 | 吉田秀雄について | 「鬼十則」

主体性を持つこと、諦めないこと、率先すること・リードすること、開拓すること、他人との摩擦を恐れないこと、等々、いずれも重要なことで、これをいつも頭に入れていれば、仕事で諦めそうになった瞬間もサボらずに完遂することができるだろう。

総合広告代理店の商品は営業のサービスクオリティ

広告代理店の一番の利益はマス媒体のコミッションである。しかし、マス媒体の買付はどの広告代理店から買っても同じで常に値引き競争にさらされている。そこで、プロモーション案件で顧客に恩を売り続けてマス媒体を定価で購入して貰うことが総合広告代理店のレガシィなビジネスモデルであった。

ノバセルのように効果検証ツールなどをお土産とする方法もあるし、電通も実際には効果検証ツールの開発は手を抜いていない。しかし、顧客に恩を売るために最も重要なのは営業の対応力である。

顧客の期待を超える新しい魅力的な提案をできたか?プロモーション施策実行中にタレントや媒体社が予定と違った動きを見せたときに満足行く解決ができるか?といった粘り強さを出すために電通鬼十則は機能する。

業務の中で炎上案件というのはだいたいにおいて「この辺で良いかな?」と少し手を抜いてしまったときに起きるもので、徹底する力はコンサルティング型営業のサービスクオリティに直結するものなのだ。

3)日本電産のミッションステートメントもは非定型作業社員の生産性の向上

日本電産のミッションステートメントもよくできている。

企業理念 | 日本電産株式会社

特に「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」のパートが重要だ。

仕事が後手に回る人の特徴

仕事が後手後手になる人やいつも忙しい人は、「タスクを整理して放置する」時間が長い。

作業をしながらメールやチャットを見て即時に解決できることは対処し、判断が必要なことは予定表にやるべき時期と一緒にプロットし、打合せが必要ならすぐチャットを投げたり打合せに行ったり、とその場で解決する癖をつけると仕事は早くなる。

後回しの原因を自覚する

「あぁこれ面倒だなぁ、すぐにやるの嫌だな、お願いするのしんどいなぁ」と精神的な弱さから後回しにしてしまうものは炎上案件になりやすい。しかし必ずやると思っていれば、後回しにすることに何の意味もない(どうせやらなければならない)のだから、さっさと解決するほうが寧ろ精神的に楽になってくる。

日本電産はこれによって生産性を上げて利益率が回復したのだが、詳細はこの本が素晴らしいので読んでほしい。

何を重視するかが明確なミッションステートメントである必要性

  • リクルート:新規事業のビジネスモデルの頑強さにつながる顧客理解と社員の共有文化
  • 電通:顧客からの収益機会を最大化するための営業の顧客対応力強化
  • 日本電産:非定型作業社員の効率化につながる、すぐやる文化

これらはいずれも企業のコア・コンピタンスに直結するミッションステートメントであり、「社員が何を重視して効率的に動くべきかの行動指針」となっている。

企業のミッションステートメントを作るときの王道は、事業部長クラスや部長クラスを集めたワークショップをしスローガンにまとめていく手法で、我々広告代理店もそのお手伝いをすることがある。しかし一歩間違えると、「お客様のために」「よりよい社会に」といった”みんなが心地よく感じるだけ”で行動指針にも利益にも繋がらないものが出来上がってしまう。ミッションステートメントの役割は”仲良しこよしでやること”ではなく、企業が社会に生き残る価値を出し続けるためには社員をどう働いてもらうか?という仕組みなのだ。

  • そのミッションステートメントを見て日々社員が自らに鞭を打てるか?
  • それを気持ちよく実行してくれるか?
  • その結果利益に直結するか?

という視点を持っておくと、ミッションステートメントを作るときにぶれないだろう。