2016年以降の広告はどうなるのだろう
未来予測というのはだいたい当たりません。
リスティング広告が誕生する前は、誰も「来年リスティング広告が出る!」とは思っていなかったし、「セカンドライフが来る!」と騒いでいた頃は、テキストベースのツイッターがこんなに普及しているとは思わなかったでしょう。
それでも、先を見据えて行動したいという欲求は、あるものです。
業界人間ベムの執筆者として有名な横山さんが、立て続けに2冊本を出しました
いつも通り刺激的な本でした。
新世代デジタルマーケティング ネットと全チャネルをつなぐ統合型データ活用のすすめ
- 作者: 横山隆治
- 出版社/メーカー: インプレス
- 発売日: 2015/12/11
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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一冊目は、位置情報データの活用方法について。
これまでは、店内に入った人をビーコンで追って広告を出す、とか、或いは人の動きを自治体が把握したい、だとか、その程度の使われ方しかして来なかったものを、普段どういう移動をしているのか?という移動パターンでクラスターに分けたデータを活用しましょうよ、という話。
例えば、早朝家を出て日中都心に出て夜中に帰宅する人と、早朝家を出て定時で自宅に戻る人とであれば、後者は夕方のTV広告でも補足できそうだけど前者は無理ですよね?みたいな。
二冊目は、まだまだ実用段階には至っていないサービスもあるものの、もっと調査をリアルタイムでして広告の施策を練りましょう、TVを補完するWEB広告を活用しましょう、そういうことができるサービスが増えて来ましたよ、という提言。
例えば、バナー広告を一部アンケートにて集計したら、リアルタイムで競合商品と比べて施策実施中に認知が上がったか下がったかとか、調べられるでしょ?という話だったり、TVだけでは届かない相手にDSPを活用しましょう、といういつも横山さんが仰っている話だったり。
中でも、TV広告の結果をGRPのアクチュアル報告で済ませてないで、ターゲットに何人・何回当たったの?とちゃんと効果を把握してますか?という指摘は耳が痛いところもありました。
とはいえ、そもそもいつまで広告なのだろうか?
レイ・イナモトさんが「広告の未来は広告ではない」と言ってから既に3年。
日本では結局いまだTVのマス広告に頼っています。
その一方で、下の2つの記事に象徴されるように、明らかに若者の中ではTV番組はコンテンツとして人気でも、これまでのように、ボーッとTVをつけていて接触する、という生活スタイルではなくなりつつあります
・テレビの次のテレビを、テレビが考えるべき時が来ている。
http://www.advertimes.com/20151021/article207085/
・実録・山形の大学生とテレビの関係「女子のパワーの源は女性アイドル」「アニメはBS11かニコ動」「親が録画した番組を仕送り」
http://www.advertimes.com/20151207/article211049/
一方で、WEB広告もステマだネイティブアドだと、純広告以外の選択肢を取ろうと必至な所が増えたり、アドブロック問題がここ最近ホットです。
WEB広告のターゲティングの精度が上がることによって、広告がちゃんとした情報になっていくのであれば、受け入れられるでしょうけれども、いっときのリターゲティング広告のようにストーカー行為になってしまっては、広告は社会的に抹殺されるのではないかと思います。
重要なのは人々の欲求を刺激することではないか
その一方で、広告が効かないからといって、「TVが効かないからおもしろ動画で!」「ストレートな広告だと嫌がられるから何もアピールしない動画で!」「社会貢献PRで!」という方向に走るのも、少し勿体ないことだと思っています。
広告の社会的な役割をブレイクダウンすると
「必要な人に必要な情報を届け、必要だと気がついていない人に実は必要だったんだと気がついて貰うこと」ではないかと思います。
人々に「これは自分にとって必要なものだ!買って良かったな!」と思って貰うにはどうすればいいのか?
をいつもゴールにして設計をしないと、多額の費用を使って面白い動画を提供して”あー面白かったね!”という一過性の喜びに終わってしまい、本来の役割を果たせません。
広告が嫌われているなら違うことをしようなどと極端に広告を避ける必要もないので、これは社会に必要なんだ、ということを増やして行きたいですね。
そこをブラさなければ、広告だろうがサービスだろうが、対応できるんじゃないかと思います。
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<補足>
WEB広告のターゲティングについて
横山さんの本にはなかったことで一つ補足です。
広告会社も広告主も綿密に調査をしたり、インサイトをブレストしたり、ユーザーを観察したりレビューを分析して、「今回の商品は~に興味があって~な生活スタイルで~なタイプの人。コミュニケーションターゲットはその中でも先ず最初に飛びつく~なタイプの人。その人の口コミが広がってからメインの~タイプを刈り取ろう!」までストーリーを設計し、メッセージをターゲット別に作ることまではやるのですが、
実際にその適切なターゲットを選別して広告枠を買うことはできません。
そんな売り方が存在しないからです。
(先ほどの「次世代デジタルマーケティング」でもここまでは指摘されています)
今でもAdWordsでアニメ・コミックファン 程度にターゲティングすることは、できますが、腐女子、夢女子、作画オタク、劇伴マニア、萌豚、サブカル系etc ちょっとずつ異なるトライブに向けて広告を出すことはできません。勿論、出稿側がキーワードを指定してターゲティングできますが、それでは全然スケールしないので、アフィニティカテゴリーを混ぜないと配信量が足りないのが現実です。
とはいえ、この数年の凄まじい変化・進化を見ていると、DMPの種類が増えて、もっと細かく精度を上げたり、
逆に人為的にカテゴリー分けをすることをやめ、カテゴリー分け自体を機械学習で分類してしまうようになるのではないかな、と思っています。