映画『閃光のハサウェイ』は主人公の感情にフォーカスした興味深い作品
映画『閃光のハサウェイ』の完成度が高いという噂を聞いて鑑賞してきた。
因みに自分は原作小説を見ていないので、三部作がこの先どうなるのかは知らない。あくまで第一部について感じた所感だ。
ガンダムらしくないガンダムの描写
何を以て「ガンダムらしい」とするかは異論があると思うが、自分はガンダムの中心にはいつも以下の描写があると思っている
- 主人公或いは語り手が偶然から戦争に巻き込まれる(→ 自然に設定を受け入れられる)
- ガンダムを所有する組織が孤立し居場所がなくなる(→ 応援したくなる)
- 政治的な主義主張が敵味方両方にある(→世界観が壮大な印象になる)
- 自分勝手でダメな主人公が少し成長する(→ 王道)
- 登場人物が感情的な激論を交わす(*富野由悠季作品に多い少し噛み合わない喧嘩腰の会話)
だが、本作ではそれらが殆どない。特に政治的な主義主張に至っては、何のために誰と誰が戦っているのかが殆ど説明されないし、動機は最後まで不明のままだ。
主人公の葛藤や心の揺れ動きに描写が注力されている
一方で本作は、組織同士の対立の描写がない代わりに、以下のようなに個人にフォーカスした心情の描写が厚い。
- 運悪く出会った人たちに主人公が興味を持つ描写がある
- (同様に)出会った人たちや仲間の主人公に対する興味関心や感情の訴えを匂わす描写がある
- 主人公が自分の精神的な迷いと悩む台詞がある
- 戦闘シーンより日常シーンが長い
- 冒頭を除いて説明的な台詞が少なく暗喩的で推測させる描写が多い(小物にフォーカスしたシーンが多数インサートされる)
- 主人公の主観でブレたりボケたりする映像のインサートがある
今までのガンダムとはフォーカスするポイントが異なるが、自分は寧ろこういった個人の感情に注力した描写がある方が人間味があって好きだし、バランスも良いと思う。
独特のMS戦闘シーン
これはガンダムシリーズが好きな人には好き嫌いが出そうなポイントだと思ったが、
といった、これまでのガンダムシリーズが凝っていた戦闘シーンの描写はあまりない。 一方で、
- 銃声の音響が強く重い
- ビームだけが光る緊張感のあるシーン
- 無重力空間の恐ろしさの演出
- 市街戦で消火栓が溶ける、天井から落下物がある、など細かい描写で恐怖を煽る
など、今までとは違った形で、戦闘シーンに「重さ」を見せてくる。
巨大なロボットが戦う描写や、派手に建物が壊れる様子や、逃げ惑う人の悲鳴などのこれまでのステレオタイプな描写とはまた違った見せ方だと感じた。
『逆襲のシェア』は見ておいた方がいい
ストーリーを理解するためというより、主人公の葛藤を追いかけるには、主人公の「ハサウェイ」がどんな”ダメ少年”だったかを知っている方が感情移入できる。
少し情緒不安定なヒロインに再び翻弄されるハサウェイ君が少し成長しつつも憎めないところがあり、泣けてくるのだ。
大きなスクリーンと良い音響のスクリーンがあてがわれているうちに見たい作品だ。
*1:公式の予告1,2がネタバレをしているのでこの特報映像をお勧めする