仕事の生産性を下げているのは、「人間という不完全なモノ同士のコミュニケーション不良」の積み重ね
ビジネスの進行を阻害する大きな要因が、自分の心の弱さであるころは、
が良くご指摘されていますが、 他にも、面倒なことを後回しにせずに「すぐやる」と説いているビジネス本も本屋でよく平積みされていると思います。
見過ごされがちなのですが人間の心の弱さは様々なケースで生産性を下げていると考えられます。
組織内のコミュニケーションコストについて
最近とても面白かった本に
という本がありました。
- 先が見えない課題から先に始めて、工程管理の最終フェーズでは先が見えるタスクだけにするようにしよう
- 課題の整理レベルでは「仮設」と呼ぶべきではない
- 意見が言いやすい組織にしよう
等々、様々な納得がある本です。
その中でも組織のヒエラルキー内のコミュニケーションコストに注目しているのが非常に印象的でした。
そこから振り返ると、恐らく日本の組織の生産性を下げているのは人間という不完全なモノ同士のコミュニケーション不良の積み重ねによるのではないか?と思えてきました。
コミュニケーション不良の例
幾つかイメージしやすい例を考えてみます。
お願いした通りに納品されず出戻りが発生する
機械が仕様の通り作るものは比較的正確に不良品が少ないのが昨今ですが、人間が作る「レポート」「提案書」「デザイン案」機会などは、”思った通りのものが仕上がってこない”ということで作業遅延することはママあります。
- 依頼する方が課題を構造的に把握できず正しくオーダーできていない。
- 「何か違うんだよねー」
- ※依頼者が考えるのが苦手で、サボってしまった。
- 「何か違うんだよねー」
- 依頼された方が、独自性を発揮し、納品物に過不足がある
- 「こっちの方が良くないですか??」
- ※受託者が自分のアイデンティティを発揮したくて好きなものを作ってしまった
- 「こっちの方が良くないですか??」
面倒な人が居ると避けるようになる
威圧的な人が居るとしばしば組織が崩壊することも、パワーハラスメントが叫ばれる中で注目されてきていると思われます。
- 取引先へ連絡するだけの業務をまだしてない
- 「済みません。バタバタしちゃって」
- ※威圧的な相手に電話するのが心理的負担で後回しにしてしまった
- 「済みません。バタバタしちゃって」
- 事故の報告が組織の上にすぐ上がらない
- 「先ず、事実確認をしないと」
- ※ミスを怒られるのが怖くて報告をせず、運良く時間が解決することに期待してしまった
- 「先ず、事実確認をしないと」
- 社内で連携が取れず同じ業務を別々の部署が外部にコストを払ってしまう
- 「あそこの部署、面倒な人ばっかなんで、もうお金で動く外部の人に依頼した方が早いんですよ」
- ※相談に丁寧に対応してくれない部署を誰も使わなくなってしまった
- 「あそこの部署、面倒な人ばっかなんで、もうお金で動く外部の人に依頼した方が早いんですよ」
良い人に思われたい、悪人に思われたくない
或いは、個人の心の弱さによる
- 無駄な会議が減らないし進め方が変わらない
- 「何か反論する空気じゃないじゃないですか?」
- ※面と向かって、やり方が違うと提示する勇気がない
- 「何か反論する空気じゃないじゃないですか?」
- 得意先と発注先や社内スタッフの認識のズレを調整できない
- 「客が素人でわかってないんですよ」「そうですよねー」
- ※発注先やスタッフに嫌われたくないので強く言えない。嘘を言ってしまう。
- 「客が素人でわかってないんですよ」「そうですよねー」
- ネガティブ思考の人の考えがチームに広まる
- 「予算が少ないからなぁ」「元々難しいお題でしたから」
- ※チームリーダーが「お前は要らない」と強く言えない
- 「予算が少ないからなぁ」「元々難しいお題でしたから」
働き方改革やパワハラ対策という視点では見えてこない
人間の本能に起因
人間の弱さは防衛本能
これも多くの人が指摘していることで、学術的な研究があるのかどうかはわかりませんが、実感としては正しい素朴な理論だと思います。
- 自分を否定されたら強く反論してしまう
- 自分が悪者にはなりたくない
- 怒られたくない
- 自分の色を出したい
などは、全て自分を守るために自動的に反応してしまうので、意識していてもある程度は避けられません
人間はだいたい怠惰
習慣化しないとダイエットも何も継続しないとはよく言われますが、
- 楽をしたい、面倒な作業を後回しにしたい
- 面倒な人との衝突は避けたい
といったことも怠惰な本能ではないかと思います。
対処について
個人のメンタルの問題に終始すると解決しない
パワーハラスメントについては、多くの会社が、パワハラと告発された人を左遷する、という対処療法的なことや、「パワハラは”今の時代ダメなんですよー、若い人辞めちゃいますよー”」という研修をして、対応しているのではないでしょうか?
或いは、すぐにやれない人への対処は、先輩からのOJTによる指導、で対応しているかもしれません。
しかし、これらの行動が「人間の本能から来るもの」だとしたら、小手先の対応ではないでしょうか?
人間同士のコミュニケーション機会を減らす
人間同士のボールのパスが増えれば増えるほど、コミュニケーション不良により不良品が発生します。「エンジニアリング組織論への招待」では、それを”アジャイル”な組織体制に解決を求めていました。
重要なのが、人間から人間へのパスの回数を減らすということなのだとしたら、
- マルチタレントの数を増やして分業の回数を減らす
- そもそも作成を人間ではなくて機械にやらせる
- イメージが難しいかもしれませんが、例えば得意先のニュースをまとめるならクロールしてトピックモデルにしてしまうと、人間のバイアスが減ります。自分の色を出してバイアスをかけてしまうことを排除できます
など、構造的な解決が可能です。
一人一人のメンタルを改造していくことも必要かもしれませんが、本能だとすると限界がありますので、いかに構造的に故障率・不良率を下げていくか?という工場生産ラインのカイゼンと同じような改善が必要なのではないでしょうか。
- 改めてオススメの本として
- また、チームのコミュニケーションを良くする方法についてはこちらの本も良いです。 グーグルのエンジニアの本ですが、チームの中に居て空気を悪くする人にちゃんと変わって欲しいと伝える、など、とても実務的な本です