広告/統計/アニメ/映画 等に関するブログ

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機動戦士Zガンダムを見ると自分の不甲斐なさや焦りをつきつけられる

機動戦士Zガンダムは、好きな作品ではないものの、人間、特にダメな人間について正直に描かれた作品だと思う。見ている間に、自分の不甲斐なさを突きつけられて、苦しくなる一方で、時が経つと味が出てくる作品でもある。

登場人物の描写について

具体的にどのようなポイントが視聴者の心をえぐるのか、個人的に感じた4名を挙げるとともに、社会人生活に於いて例えばどういうことなのか?をまとめた。多少ネタバレはあるかもしれないが、鑑賞への興味になれば幸いだと思う。

1)迷惑な子ども

初代ガンダムのカツ・レツ・キッカからカツが活躍する。活躍するのだが、自分の力を過信しいつも文句ばかり言う上に軽率な行動をとり、仲間を危険に晒す。まだ子どもという設定だが色欲にも負ける。

とんでもなく酷い登場人物だが、誰もが若い頃は、組織の上位層に文句を言っていなかっただろうか?だから一層、成長しないカツを見ていて腹が立ってしまうのだ。

2)不貞腐れるメンバー

レコア少尉は、自ら志願して特別任務に就くのだがそこで一切成果を上げることができず戻ってくる。その後、遅れを取り戻そうと再び一発逆転の単独任務に志願するのだが、逆にそれをきっかけに組織への貢献よりも自分がしたいことを優先する割り切りを憶えて離脱してしまう。

最前線の現場を離れたのち、みんなに誇れる成果もないまま出戻って来ることほど格好の悪いことはない。勿論、誰も組織の仲間はそれを避難することはないだろうが(一部の外資系だとクビになるのかもしれないが・・・)、ただただ遅れを取って年齢だけ重ねてしまったことに焦りを感じるのは当然のことだし、居場所がなくなることへの恐怖はみんなあるだろう。もう引用元も思い出せないが、管理職になるべく期待されて留学させて貰っている間に就く予定だったポストを後釜に取られて昇進し損ねたという人の記事を見たことがある。転勤・異動様々な要因で自分のキャリアプランが崩れるということは日常茶飯事で、そこからメンタル面で復帰するスキルも必要なことなのだ。レコア少尉のように一発逆転の任務に就くのもハイリスク・ハイリターンな選択だ。

3)実力をわきまえないもの

ファは、パイロット適性がないものの、カミーユに認められたかったのか、とにかくパイロットになって戦闘に出ようとするが、仲間を危険に晒してしまう。

全く役に立たないわけではないし、やる気があることも良いことなのだが、任せられない人には任せられないこともある。努力家をクビにする必要はないかもしれないが、向いていない人の職種を変更することは管理職の仕事の一つだろう。この手の悪くはないのだが困った人への適切な対応は、多くの人が悩むことだ。また、一方で、自分が足を引っ張っていると自覚しつつももっと役立てるように頑張りたいという気持ちもまた共感するところがあるだろう。

4)自分の人生を生きないもの

サラは、組織方針への共感や自分が生きる糧を得るためではなく、上官が好きだからついて行くし危険な任務に就く。

彼女は、自分を道具の一つ或いはせいぜい手塩にかけた部下の一人としか思っていないのに過度な期待を寄せ、決して報われることのない仕事を続けている。仕事熱心な彼女に好意を寄せるのも子どもだけで、果てはライバルも登場する。本当に可愛そうな登場人物で、まさにやりがい搾取に搾り取られたと言ってもいい。しかし、自分の人生の重要な判断を上官という他人に委ねてしまっている限りは、彼女は、自分の人生を生きないある意味無責任な人物ということでもある。クライアントから感謝されることを生きがいにする営業や褒められることが喜びになっている社員など、似たような屈折した生き方を選択してしまっている人は多いのではないだろうか。特に自分は営業職なので、クライアントに喜ばれることが自分の生きがいと思っていた時期があるが、「それでは利益が出ないし組織に貢献できてない」とローパフォーマーであることに気がついてから、クライアントに感謝されることを自分の喜びと再変換しないように心がけている。

登場人物以外の魅力「ガンダムを宇宙に打ち上げることの重さの描写」

もう1点、Zガンダムに特徴的だと感じた点がガンダムを宇宙に打ち上げることの重さの描写だ。地球に降りてきたガンダムパイロット達を宇宙に再び上げるために、13,14,15,16話と飛んで20話と合計5話を費やしている。その間、どうやって敵の目をくぐってこっそりガンダムを宇宙に上げるかを作戦を練るのだが、これだけ話数をかけて重みを持たせるのは並々ならぬテクニックだ。そして1回目の宇宙打ち上げと2回めの宇宙打ち上げの間に、カミーユとフォウのエピソードが挟まれることで二人の離別がとても大きなものに感じるようになっている。

Davinci Resolve Fusion でテキストによるマスクを作る

Davinci Resolve は無料で使える多機能な動画編集ソフトで、編集・カラコレ・ビジュアルエフェクトなどが出来る。

テキストをマスクにして背景の映像を流す、というテクニックはAdobe After Effectsでも好まれる演出技法だが、Fusionでも勿論できる

準備した素材

背景で動く動画がなかったので、縦に長いグラデーション素材にTransformノードを使って、下から上へ動くようにキーフレームを設定した

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1920x2160のグラデーション素材

テキストマスクの設定

Text+で適当なテキストを打ち、MergeノードにBackground(背景、黄色)として繋げる。

MergeノードのApply Modeを「in」にすることで、切り抜きになる。

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テキストをマスク化する設定

完成した動画

そのままだと背景が透明なので、グレーのBackgroundを配置した。

youtu.be

BANANA FISH のユエルン様に泣く

子どもの頃から漫画原作を勧められていて今まで履修してこなかった『BANANA FISH』のアニメをつい最近見た。

映像も音楽もストーリーも美しく、泣けてしまった。忘れないうちに自分の感想を残しておきたい。

アッシュは憧れの対象

アッシュは美形・頭脳明晰・身体能力抜群で、とにかく生存能力が高い。何故、スラム街のギャング達が彼に従ったのか?はアニメ版では明かされることはなかったが、こうも三拍子揃ったキャラクター設定では、見る方もそんな説明がなくてもアッシュに惚れてしまう。

本作はアッシュに惚れた者同士が、様々な形で愛情表現を露出し、結果的にアッシュを翻弄する話だ。

  • 自分の色に育て上げようとする者
  • ライバルになりたい者
  • メンタルサポートする者
  • 身体能力で手助けする者
  • ジャーナリストとしての立場から手助け・応援する者
  • 屈折して嫉妬する者
  • 所有物にしようとする者

登場する主要人物の殆どが、屈折している・真っ直ぐであるという違いはあれど、アッシュに惚れこんでいく

奥村 英二は何故か特別扱い

アニメ版では特に奥村 英二が重要だ。アッシュによると「唯一、何の見返りも無しに助けてくれた人、友達」ということのようなのだが、英二が登場する前から、ショーター・ウォンとは友達だし、アッシュが好きで集まっているギャング仲間も、建前上ジャーナリズムの利害関係と一致としているとはいえ明らかにマックス・ロボも年の離れた友達だ。

何故、自分を守れず足を引っ張るだけの英二がアッシュをここまで惹きつけるのか?は謎のまま、ストーリーは進行するのだが、その視聴者の声を代弁するような存在が、「李月龍(リー・ユエルン)」だ。

ユエルンの正直さ

ユエルンは最初はアッシュを超える知力・身体能力・美貌のキャラとして登場し、良きライバル或いは仲間となりうるように見えて登場し、華僑のヒエラルキーを変えるところまではクールなキャラクターだ。

ところが、彼はアッシュが好き過ぎて、アッシュの親友が英二であることに耐えられず、徐々に英二への嫉妬を隠さない感情表現豊かなキャラクターへと変わっていく。ディノ・ゴルツィネの家に派遣されても狡猾に鍵を盗み出しアッシュに渡してやるような、そんな緻密でスキのなかった筈の彼が、後半の話数へ進むに連れて、無力で感情的な少年に変わっていく。

特に、シン・スウ・リンに「ほっといてよ!」と思わず女の子のような言い方(福山潤さんの演技が素晴らしく的確)をしてしまうシーンは涙なしには見られなかった。

一方で、英二に対してアッシュの隣に居る人物として相応しくないと指摘するユエルンの言動は、視聴者の声の代弁でもある。「何故アッシュはそこまで英二を気にかけるのか?」「おぽっと出でアッシュに何度も助けられるだけの足手まといが、何故こうも自信満々に「アッシュを助ける・力になりたい」などと言うのか?」そう思いながらずっとアッシュと英二を見ていた視聴者にとって、英二が溺愛されることの謎を作り手も自覚した上でストーリーを進めていたいことを知って、何故か安心してしまった。「そうだよね。作者も自覚しているんだね。」と。

英二のことはわからない、だがそれでいい

結局のところ、何故アッシュがそこまで英二にこだわったのかは分からないままエンディングを迎える。だが、明確に表現されないだけであって、何か琴線に触れることがあったのだろうと思う。

もしかすると、本当は英二の棒高跳びの美しさに惚れたのかもしれないし、生死や欺瞞に満ちた世界を見てこなかった純粋な瞳に憧れを感じたのかもしれない。アッシュが好きだというならそれでいい。

最終的には、そんな感想を抱いて納得した。

本作に出てくる人はみんなアッシュが好きだ。もしかすると違う出会い方、違う愛情表現の仕方があったら、全然違う世界になったかもしれない。そんな妄想と寂しさを感じる作品だった。


第1期のエンディングが好き。

youtu.be

第2期のエンディングも、イントロから泣きそうになる。

youtu.be

ResolveにFusion 360の3Dを取り込んでみる

Fusion 360 を使ってみたので、Resoveで読み込めるのではないか?と確認してみた

結果読み込むのは非常に簡単だったので備忘録のリンクだけ貼る。

ただし、テクスチャを再現するのはわからなかった。

Fusion 360 で正八面体を用意する

手法はこちらを参考にしました。

note.com

正三角形は線分で作り、移動して正方形の1辺に配置しました。

木材にした結果はこちら

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正八面体

Resove での作業

3dデータの読み込みは、こちらの動画を参考にした。

他にも色々と見たがFBXを推奨するものが多かったのでFBXで

www.youtube.com

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resolve fbx import

作成した動画

どういうわけかどんな動画を参考にしても、テクスチャを適用させることができない

正八面体はResolve上で色をつけた。

背景を適当にイラレのグラデーションで用意して作ったのが

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背景

こちらの動画

youtu.be


20/12/06 追記

マテリアルが何故インポートできないのか?と不思議だったが、どうやらResolve の問題ではなく、Fusion 360 の方がマテリアル付きでのOBJファイル吐き出しに対応していないからだ、ということがわかってきた。

奥が深い。

knowledge.autodesk.com

Affinity_Photoで自由変形をする

Affinity Photo でIllustratorPhotoshopのような自由変形をしたいと思っても、中々正しい情報にたどり着けない

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Affinity Photo 自由変形 検索結果

  • Affinity Photoには自由変形ツールがない。できるのは回転・縮小拡大・変形のみ
  • Affinity PhotoのiPad版アプリには、フィルタのパースペクティブからできる

など、一見すると自由変形機能がないように見えて諦めかけてしまう、しかし、実際にはちゃんと実装されているので、ここにたどり着き方と使い方をまとめておく

Affinity Photo の自由変形

メッシュワープを使う

Adobeのソフトで自由変形のときに何という機能を使うか?そう「ワープ」で変形する。従って、「Affinity Photo メッシュワープ」などで検索すれば、自由変形するための正しい手法が見つかる

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Affinity Photo メッシュワープ 検索結果

メッシュワープを使った変形の手順

画像を配置した後に、画面左下「ツール」の下の方に、パースペクティブとメッシュワープのためのアイコンがある。そこをポインタで長押しすると、サブメニューが表示され、メッシュワープが選択できるようになる

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メッシュワープの適応

後は、Adobeのソフトと同様。まず四隅の位置を変更する。

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四隅の調整

次に、ハンドルを使って歪んでしまったところを真っ直ぐにする。

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ハンドル

全て調整をしたら適応を押して反映させる。

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適応

レイヤーに分かれているので、

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レイヤー

PSDに吐き出して他人に渡すこともできる。

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PSD吐き出し

何故、Affinity Photoに自由変形が無いと誤解されがちなのか?

ノートPCの罠

映像編集ソフトでも画像加工ソフトでも起きる現象だが、ノートPCの画面表示において、メニューの表示が多いソフトウェアについては、全てのツールが表示されない場合がある。

例えば、時分のノートPCだとデフォルト表示では、左下のメッシュワープツールが出てこない。

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デフォルトの表示

従って、ツールバーを一時的に非表示にするか

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ツールバーの表示

ディスプレイの設定で、拡大率を下げる(画面では150%(推奨)から125%に変更すると、ツールが全て表示された)などの対応が必要である。

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ディスプレイの拡大・縮小


今回使った画像は全て自分で撮影したもの。Before afterを貼っておく

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befiore

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Insert

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After

竹中平蔵氏を追いかけた『市場と権力』が面白い

フォローしている人のRT経由で竹中平蔵氏を追いかけた『市場と権力』という本を知った。非常に為になる本だったので、本書で得た気づきをまとめたい。

『市場と権力』という本について

注意点と読み方について

本書を読むにあたっては数点注意がいる。

  • 著者は竹中平蔵氏に好意的ではない
  • 本人へのインタビューはなく周囲の人物へのインタビューとその他公開資料が中心
  • 経済学の専門家が書いたものではない

上記のような理由から「竹中平蔵の政策の良し悪しを判断する目的」で本書を読むのではなく、「竹中平蔵氏のように政治に影響力を持つにはどうしたら良いか?」という視点で読むと得るものが出てくる

竹中平蔵氏はどのレベルから権力を持つに至ったか

彼は二世議員のように生まれながら政策に関与できる有利なポジションに居たわけではない。低所得者でもないが、大企業のサラリーマンとは同程度に収まる可能性があったレベルから大臣にまでのし上がっている。

幾つか彼の不利なポイントを挙げる。

  1. 和歌山県和歌山市の靴職人の息子
    • →この時点で地元で一生を終えるパターンもあった。
  2. 一橋大学経済学部
    • →高校時代の教師の影響でもあるが、東京大学ではなく一橋大学を選択してしまった。一橋大学も充分な学歴だが政治家や官僚のように政策に関わるには不利ではなかったかと思う。
  3. 日本開発銀行に入社、さらに地方に飛ばされる
    • →安定した公共にやや近い銀行。そのまま定年退職を迎えるという人生もあったろう。

大企業に何とか入った普通のサラリーマンと同じような経歴である。しかし彼はそこに留まらずに、上を目指した。

竹中平蔵氏のジャンプアップ

主なジャンプアップのポイント。それぞれのターニングポイントで戦略的に努力していることが本書から読み取れた。

  • 大学時代のサークル友達の親が著名人:誠実さから人脈を作る。
  • ハーバード大留学:日本経済に詳しいという立場を有効活用しアメリカの経済学者と人脈を作る。
  • 大蔵省出向:卒なく業務をこなすことアメリカの経済学者と交流があることで信頼を得、人脈を広げる。
  • 大阪大学助教授:既存の人脈を活用し信用のある肩書を得る。その後、博士号取得。
  • 東京財団のインテレクチュアルキャビネット:政界との繋がりを得る。
  • 小渕内閣の経済戦略会議に参画:政策に参画し、卒なく業務をこなす手腕で信用を得る。
  • 小泉内閣入閣:政争に専念する小泉氏のサポートとして大臣をこなし続ける。

特に参考になる点

竹中平蔵氏のジャンプアップのうち、特に重要だと思われるところをピックアップしたい。

  • 得意なスキルを有効に使う
  • なりふり構わない

得意なスキルを有効に使う

竹中平蔵氏の得意なスキルは、2つだと理解した。

  1. 卒なく業務をこなす
  2. スピーチが上手い

1.「卒なく業務をこなす」

人望を得るには様々な手法があるが、竹中氏の場合は、「卒なくこなす」ことで他人を助け、その恩義で職業斡旋をして貰ったり、重要な任務を任されるようになっている。

  • サークル友達の親の家庭の仕事を手伝う
  • 金融庁で忙しい上司の仕事をサポートする
  • 政争にしか興味がなく政策に疎い小泉氏をサポートする

人によって能力は「愛嬌」かもしれないし「泥臭い業務の引受」かもしれないし「腕力」かもしれないが、どうやってキーマンの役に立つか?という視点は、社会人の若手やセールスパーソンの得意先への入り込み方などの参考になる。

2.「スピーチが上手い」

一度だけ竹中平蔵氏のスピーチを聞いたことがある。とてもわかり易く、高くても講演をお願いする価値が十二分にあると感じた。他にも以下のような場面でその能力を発揮している。

  • 論文のデータ分析は仲間に依頼し結果の解釈に徹する
  • 会議を取りまとめるのが上手く、会議体の進行のポジションを得る
  • 演説が上手く大臣向き

など、研究者時代から政策担当者時代まで、彼は自分の果たせる役割をよく理解した上で他社貢献している。

自分の特技でどう他人に貢献し信頼を得るか?自分の特技でどう社会における役割を確保するか? ということに自覚的でなければならないと痛感した。

なりふり構わない

何かを失ってでも徹底することは大事だ。付き合う相手を選べ、八方美人になるな、という一般的な助言とも重なる。竹中氏の徹底ぶりは例えば以下のようなエピソードだ。

  • 単著を出すために共同研究者との縁を切る。
  • 郵政族を解体したい小泉氏のために、既に財政投融資が解決済みで政策的に意味のなかった郵政民営化を完遂する。
  • アメリカの経済学者と連携する政権の信頼を得るために、郵貯・かんぽの分割にこだわり、管轄大臣の麻生太郎氏に内密のままプランを立てて小泉首相の合意を取り付ける。
  • りそな銀行を破綻させるために、友人を通じて朝日監査法人に意向を伝え、監査の方針を変えさせる。

一般人のレベルを超えている例で自分のことに照らし合わせるのが難しいかもしれない。竹中氏の話からはレベルを下げて、例えば広告業界では以下のようなことがある。

  • 現場担当者やキーマンに競合の代理店が信頼されていれば、その上司にアプローチし代理店選定の企画競争(コンペティション)を実施させる。そのためにゴルフや会食を設ける。
  • 重要なクライアントの社長・役員の子息を自社に必要ない人材であっても入社させて恩を売り、取り扱い高を維持する。

どのような業界でも大なり小なりあるはずだ。特に、自分が諦めたポイントでプロジェクトのクオリティが決定してしまうという経験は、多くの人にあるのではないだろうか。

終わりに

竹中氏のテクニカルな部分にフィーチャーしてしまったが、彼には「のほほんとした正社員のあぐらをかく者を見返す」というパッション或いは執念がある。”嘗てなら正社員になれたかもしれない人”や”破綻扱いされた銀行マン”など彼の政策の裏で損をした人も多く、”今なお正社員の人”からしても彼が政策に関与するのは脅威だ。しかし、本書によると竹中氏は政策に関与する前のシンクタンク時代に既に長者番付に載っており、私腹を肥やす必要はなかった。

何かを成し遂げる人には、並々ならぬ闘志があるものだ。

企業のミッションステートメントは社員を効率的に働かせる仕組み

経営者の本やビジネスモデルの本、或いは、社員のチームワークの本を読んでいると、「企業のミッションを決めること」をみんな重視していることがわかる。

しかし、ミッションを決めたことでどのような効果を望み、その裏で作動している仕組みについての洞察は余り多くないようにもみえる。ミッションステートメントを作るにあたってとても重要な視点なので、著名な企業の例から簡潔に確認してみたい。

1)リクルートのミッションステートメントはチームワークに貢献する

リクルートは外から見ていると「求人広告から始まりスーモ、ゼクシィ、ホットペッパーなど広告媒体を新たに作っていく会社で、3年位で転職していくモーレツ社員の会社」というイメージがある。利益に向かってがむしゃらに新規事業を立ち上げて、見込みがあると思ったら一気にマス広告でカテゴリーナンバーワンを取っていき、社員同士も競争が激しい会社、、そんな荒々しい企業だ。

ところが、最近読んだ本を読むと、社内は全く違う空気であることがわかった

社会貢献活動というミッション

リクルートのミッションステートメントとして有名なのは、”ビジネスモデル”として紹介されているこの言葉だろう。

「最適なマッチングで世の中の“不”を解消しクライアントとユーザーに新たな価値を提供」

https://recruit-holdings.co.jp/assets/pdf/annual/2015/annual_2015_jp_2.pdf

先ほどの本から要約すると、このミッションステートメントには2つの意味がある。一つは、「顧客のお困りごとを”どの予算を付け替えてでも欲しいと思うか?”まで掘り下げて徹底的に確認せよ」という意味で、これによって失敗する新規事業というものが減るということで、いかにもリクルートらしいのだが、もう一つの方が意外であった

「社会のお困りごとを解決する社会貢献企業であるという自負を持つ」という意味もあるのだ。

社会貢献活動だと社員が信じることで「社員同士の共有」が生まれる

この2つ目の効果は絶大で、リクルート内では社員同士が積極的に”良かった情報”、”上手く言ったケーススタディ”などを共有しあっているのだという。俺が一山当てて抜け駆けしてやるぜ!ということではなくて、お互いに社会をよくするために知見を共有しあう文化があるのだという。

常に新規事業を立ち上げ続けて拡大するリクルートにとって、失敗しないビジネスモデルを作るには社員の経験が共有され受け継がれていく必要がある、そのような文化が作れたからリクルートはいつまでも枯れずに新規事業が生まれてくるのだ。

2)電通鬼十則は営業のサービスクオリティを維持する

何度読んでもよくできていて無駄のないミッションステートメント電通鬼十則だ。

公益財団法人 吉田秀雄記念事業財団 | 財団の概要 | 吉田秀雄について | 「鬼十則」

主体性を持つこと、諦めないこと、率先すること・リードすること、開拓すること、他人との摩擦を恐れないこと、等々、いずれも重要なことで、これをいつも頭に入れていれば、仕事で諦めそうになった瞬間もサボらずに完遂することができるだろう。

総合広告代理店の商品は営業のサービスクオリティ

広告代理店の一番の利益はマス媒体のコミッションである。しかし、マス媒体の買付はどの広告代理店から買っても同じで常に値引き競争にさらされている。そこで、プロモーション案件で顧客に恩を売り続けてマス媒体を定価で購入して貰うことが総合広告代理店のレガシィなビジネスモデルであった。

ノバセルのように効果検証ツールなどをお土産とする方法もあるし、電通も実際には効果検証ツールの開発は手を抜いていない。しかし、顧客に恩を売るために最も重要なのは営業の対応力である。

顧客の期待を超える新しい魅力的な提案をできたか?プロモーション施策実行中にタレントや媒体社が予定と違った動きを見せたときに満足行く解決ができるか?といった粘り強さを出すために電通鬼十則は機能する。

業務の中で炎上案件というのはだいたいにおいて「この辺で良いかな?」と少し手を抜いてしまったときに起きるもので、徹底する力はコンサルティング型営業のサービスクオリティに直結するものなのだ。

3)日本電産のミッションステートメントもは非定型作業社員の生産性の向上

日本電産のミッションステートメントもよくできている。

企業理念 | 日本電産株式会社

特に「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」のパートが重要だ。

仕事が後手に回る人の特徴

仕事が後手後手になる人やいつも忙しい人は、「タスクを整理して放置する」時間が長い。

作業をしながらメールやチャットを見て即時に解決できることは対処し、判断が必要なことは予定表にやるべき時期と一緒にプロットし、打合せが必要ならすぐチャットを投げたり打合せに行ったり、とその場で解決する癖をつけると仕事は早くなる。

後回しの原因を自覚する

「あぁこれ面倒だなぁ、すぐにやるの嫌だな、お願いするのしんどいなぁ」と精神的な弱さから後回しにしてしまうものは炎上案件になりやすい。しかし必ずやると思っていれば、後回しにすることに何の意味もない(どうせやらなければならない)のだから、さっさと解決するほうが寧ろ精神的に楽になってくる。

日本電産はこれによって生産性を上げて利益率が回復したのだが、詳細はこの本が素晴らしいので読んでほしい。

何を重視するかが明確なミッションステートメントである必要性

  • リクルート:新規事業のビジネスモデルの頑強さにつながる顧客理解と社員の共有文化
  • 電通:顧客からの収益機会を最大化するための営業の顧客対応力強化
  • 日本電産:非定型作業社員の効率化につながる、すぐやる文化

これらはいずれも企業のコア・コンピタンスに直結するミッションステートメントであり、「社員が何を重視して効率的に動くべきかの行動指針」となっている。

企業のミッションステートメントを作るときの王道は、事業部長クラスや部長クラスを集めたワークショップをしスローガンにまとめていく手法で、我々広告代理店もそのお手伝いをすることがある。しかし一歩間違えると、「お客様のために」「よりよい社会に」といった”みんなが心地よく感じるだけ”で行動指針にも利益にも繋がらないものが出来上がってしまう。ミッションステートメントの役割は”仲良しこよしでやること”ではなく、企業が社会に生き残る価値を出し続けるためには社員をどう働いてもらうか?という仕組みなのだ。

  • そのミッションステートメントを見て日々社員が自らに鞭を打てるか?
  • それを気持ちよく実行してくれるか?
  • その結果利益に直結するか?

という視点を持っておくと、ミッションステートメントを作るときにぶれないだろう。