広告/統計/アニメ/映画 等に関するブログ

広告/統計/アニメ/映画 等に関するブログ

ブランディングで売上拡大という幻想

宣伝部やプロモーション部或いはその仕事を請ける広告代理店、様々な人が「自社製品をブランディングして売上を拡大したい」と思っていないだろうか?

だが そもそもブランディングして売れる数を増やすという発想自体が間違っている

プレミアムなブランディングについて

プレミアムブランドは利益率重視であって収益重視ではない

最近読んだ『マツダBMWを超える日』という本の中に重要な指摘があった。

フォルクスワーゲンの収益の33%は台数では21%のアウディが稼いでいる

ここに全てのヒントが集約されていると言っても過言ではない。

プレミアムなブランドは売れる数こそ少なくても、利益率が高いため多額の利益を残すのだ。

STPは売る数を減らす行為

ブランディングしたいんです」「他社と差別化したいんです」と広告主が言ったとき、「ターゲットを絞って尖らせましょう!」「人々は1つのパーセプションしか憶えられません!」と広告代理店のマーケターやクリエイターは言う。

しかしこれは広告主の応えになっていないのではないか?「いやーそんなもったいないことはしないでよ。みんなに買って欲しいのよ」「みんなに売れる良いメッセージが欲しいのよ」と。

ブランディングの基本であるSTP(Segmentation、Targeting、Positioning)は、その名にある通り、市場を分割する。必然的に狙う消費者の数は絞られるし、売れる数も減る可能性がある。

だが、広告代理店の人も「売れる数を増やしたい」と思ってSTPを提案している。これはどういうことだろうか?

マスブランドについて

リーチの問題との混同

何故、「ブランディングしたいんです」という宿題に対してSTPを提案するのか?何かすれ違っているようでいて、いったい何がすれ違っているのか?

  • 広告主の思う「ブランディングしたい」→「みんなに好かれたい。(売れる数は維持もしくは増やしたい)」
  • 広告代理店の思う「ブランディングする」→「価値を理解する人に正確に情報を伝えて買って貰う。(情報が届いていなかった人に届けば売れる数は増える。)」

図解した方がわかりやすいかもしれない。 f:id:yyhhyy:20180909212645p:plain この考え方は一理あるのだが、あくまで特定の人に刺さる商品価値を持ったプレミアムブランドが取れる戦略だ。広告主側が「みんなに好かれたい」と思って作っている商品では当てはまらない。

実際にはこういうことだ。 f:id:yyhhyy:20180909212656p:plain 今まで売れていなかったのは、宣伝で言っていることの意味がわからなかったのかもしれないし、そもそも広告の投下量が少なかっただけかもしれない。

逆に、既にこれまで充分にメッセージ開発もし、多額の広告費もかけていたというのであれば、それはもう限界まで来てしまっていてこれ以上伸ばせない、ということでもある。

殆どの商品はマスブランドである

「みんなに好かれたい」「ターゲットを絞りたくない、もったいない」ということであれば、それはマスブランドである。マスブランドの場合は、好意度の獲得量(Preference)が重要になってくる。 f:id:yyhhyy:20180909212711p:plain コモディティ化した市場の中で、競合より良い印象を、競合より多くの広告投下をし続けないことには、忘れ去られてしまう。レッドオーシャンだから販売管理費はかかるのだ。

まとめ

すれ違いが起きる仕組み

得てして広告代理店の人は「ブランディング」という言葉を聞くと「プレミアムブランド」の戦略を描いてしまう。全てのブランドが「ブランディングすれば下駄をはかせられる」「高い価格でも買って貰えるようになる」そう勘違いしているのだ。

しかし実際には、ポルシェやAudiのように尖った商品でなければそういったことは起きない。

彼らの心理を予測すると、ついつい贅沢なプレミアムブランドみたいなかっこいい仕事に憧れてしまうので、全ての商品ブランドに対して「差別化してターゲットを絞りましょう!」などと応えてしまうのだろう。

(テレビ+Youtube)×タレントニコパチ に愚直にお金をかけるべきであって、競合ブランドに勝ちたければこの図式に対して競合ブランドよりも努力を注ぎ込むべきだ。それ以外は怠慢である。

勘違いさせてしまう代表例

もう1つ、勘違いの原因がある。

広告代理店の人は何故かアップルコンピュータ製品が好きだということだ。デザイナーでないのにアップルコンピュータ製品を使う人もいる。

以前、アップルのファンについて書いたことがある。

yyhhyy.hatenablog.com

初期のMacintoshファンや実利として必要としているデザイナーが買っているMacPro系がある一方で、MacBook Airや新しいMacBookなどの廉価モデルを買っている人や、iPhoneを買っている人はマス層だ。Macintoshは一見プレミアムブランドでありながらマス市場も獲得しているように見えるが、実際にはマスブランドであり、大量に広告投下をすることでも有名だ。

では何故ブランドだと感じるのか?というと、クリエイターが指示していることが好感度に貢献しているだけだ。

Appleはプレミアムなブランドだ」と勘違いしているが、「Appleは好感度が極めて高い」と言った方が現実に即しているだろう。

一度も広告をしたことがないフェラーリなどのプレミアムブランドや一部の広告枠にしか出さないラグジュアリーブランドとは異なる存在なのだが、混同してしまうのだろう。


プレミアムブランドについて参考になる本

Preferenceについて参考になる本