グランドデザインをできる人材が最も枯渇している
最近”そうだよなぁ”と思ったツイートがこれ。
自分も含めてやはり日本人は組織や制度を「デザインする」「設計する」というところが弱いんですよね。現場のディテールでいかに成果を出すか、というのがどうしても日本の組織の評価軸になってしまってるから、優秀な人「ほど」デザインよりまず目の前の課題解決となりがちだったりする。
— とくさん (@nori76) 2018年4月7日
日頃の業務でも痛感しますが、 最初の絵を描かける人 というのが枯渇していると感じます。
広告「代理店」業界では、グランドデザインはクライアントがやってきた
広告関連で世に出る記事ではまだまだ広告クリエイターがインタビューに応じることが多く、広告宣伝業務を取り仕切っているのは広告会社だと思われがちかもしれません。
しかし、最初の出発点は広告主側が描いていることの方が多いです。
広告主は「費用対効果」の視点で常に考えている。
どんな商品でも全国規模のテレビスポットを打てば、日本国内に最も効率的に到達します。確かに一度に2億円は軽く一週間で消えてしまいますが、日本全国には1.27億人も人がいるので、届いたのが1/3の6000万人程度だとしても1人あたりたった3円で届きます。
とは言え、全ての商品が宣伝費に2億も出していいわけではありません。
売上の10%程度を宣伝費に投下する、と逆算しても20億円売上る事業規模でないと2億円投下することはできませんし、全国規模で展開していても「店舗配下率が競合より低い」「ターゲットがニッチである」などの条件によって費用対効果は更に下がっていきます。
しかしなかなかそういう視点は、広告代理店側には育っておらず、 一部の層には受けそうだけどリーチはしない企画 、 一般層には受けそうだけどターゲット層の琴線には触れない企画 、 そんなにコストかけらんないよ!という企画 といった門前払いレベルの提案が出て来てしまいます。
事業ドメインからプロモーション計画を練るのは常に広告主側だった。
- 商材の売上予測しての宣伝費の確保
- 各ブランドへの配分
- 年間の宣伝費配分スケジュール
- 施策の費用対効果の振り返り
などは広告主側(事業会社)がやり、広告代理店には、
- 良い広告枠の確保
- 人気タレントの確保
- 優秀なクリエイターの確保
などの川下の業務を委託してきたのが、広告主と広告「代理店」の関係でした。
ですので
- どのブランドに宣伝予算を集中させるべきか?
- その商材が狙うターゲットはどこが実効性があるか?
は、 お金を払っている広告主側が全て設計し、オリエンしてきた というのが実態です。
広告代理店から広告会社にという掛け声
10年前から広告代理店は広告会社と名乗るようになりました。広告媒体枠の確保だけでなく、広告主の事業課題を発見しそれを解決する コンサルティング型営業 への転換を目指したのです。
未だにその夢は実現せず、課題を発見できないマーケッターやクリエイターは「クライアントのオリエンがしっかりしていない」と言って匙を投げてしまうケースもあります。
デジタルマーケティング業界でも似たような現状
以前この記事でも書きましたが、デジタルマーケティング用ツールを提供する会社は沢山あっても、それぞれがポジショントークをするだけで、事業会社にとってどのツールを組み合わせるのが効果的か?は、まだ誰も描いてくれません。
これも今日見た求人情報の記事ですが、CRMのデジタル設計ができるIT人材が不足している、という指摘は痛感します。
https://newspicks.com/news/2706135/body/newspicks.com
「デジタルマーケティングのツールを使ってデータを元にPDCAを回しましょう」という画餅の資料は、ベンダーも広告会社も用意しますが、
- 実際に取得できるデータは?
- その取得したデータはどこまで販売データを説明できるのか?
- 導入の結果得られる利益は費用対効果に合うのか?
をふまえて提案できる企業はまだありません。
例えば、(仮の話なので数値はデタラメです)
という状況だったとき、オウンドメディアやCRMに蓄積されたデータを使ってどの程度効果があると言うのでしょうか?DMPとバナー&メルマガが効率化されてどの程度販売に影響すると言うのでしょうか?
グランドデザインを描く人材・叩き台を作れる人材
最初の叩き台を作るセンスが良い人 に出会うことがあります。私には残念ながらまだその能力がなく、どうすれば良いのか?はわかりませんが、グランドデザインが描ける人には幾つか特徴があるなぁとは思っています。
世の中の動きの背景にある心理を自分なりに常に考察している
SHOW ROOMの社長は努力家ですが、路上ライブの投げ銭という心理を洞察しています。
やれるという自信がありトライ・アンド・エラーをしている
DJ社長については、「がむしゃらに自転車漕いでいる奴の横で、一週間原付き免許取る努力をした奴は後で追い抜いて圧倒的な差をつけていく」という部分抜粋動画を見て知ったのですが、先ず50人もパーティに呼べる、という求心力・カリスマ性から圧倒的です。
落合陽一さんの本や記事はどれを読んでもなるほどなぁと思います。これからの時代は、一人一人が事業主となって行かなけらばならなくなる、という指摘をしています。
- ジャンル: 本・雑誌・コミック > 人文・地歴・哲学・社会 > 社会科学 > 社会科学全般
- ショップ: 楽天ブックス
- 価格: 1,540円
2025年教育改革も、自分で課題を発見し解決し、どう社会に自分が貢献できるのか?を問い続けることが重視されています。
グランドデザインを描く作業を他人に任せて請け仕事だけをやり続けている労働者気質の人は、この先ますます生き残りにくい時代になっていくのではないか、という危機感があります。