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データ分析で重要なのは「視点」~データサイエンティスト達に本当に必要だったと思われるものについて~

「統計のことがわかっていない自称データサイエンティストが増えて現場は困っている」という”データサイエンティスト”のつぶやきをよく見るようになりました。

これはいったいどういうことなのか?を考えてみたいと思います。

データサイエンティストブーム

データサイエンティストという職業が注目されたのは2010年頃だったでしょうか?

この本が出たのはもう5年前。この頃は「データサイエンティストが不足する」などと言われ、大学でも統計学を教えるべきではないか?などの議論があったように思いますが、その後、データサイエンティストブームは沈静化したように思います。

実態としては、「そこまで”データサイエンティスト”が必要ではなかった」ということではないかと思いますし、必要ではなかったと気がつき始めたからこそ”データサイエンティスト”として生き残ろうと思っていた人は、「方向転換のサンクコストを払うべきか?」、「自分たちの存在価値を喧伝するべきか?」の岐路に立たされているのではないか?と思います。

それでは、実際に求められていて、今も足りない人材は何だったのでしょうか?

データ分析に必要な人材

データ分析に必要なスキルは主に以下の3つです

  • ビジネスの視点
  • 統計学の視点
  • システムの視点

ビジネスの視点は「マーケター」の役割で、システムの視点は「エンジニア」の役割です。

近年の急激なマシンスペック向上により、これまでマーケターが使っていた統計学レベルでは対応できない統計分析ができるようになってきたので、改めて「統計学」の視点が必要となったのでした。

そして、”これからはビッグデータだ”と言っていた頃は、まさに急激に増えた”機械学習”、”ディープラーニング”といった能力が必要とされていたのです。

※なおデータ分析に必要な人材とチームのイメージについてはこの本が最もバランスが良いと思います

必要とされる統計学にはバラつきがあった

一方で、求められる「統計学」についてはバラつきがありました。

Googleの中でアルゴリズムを作りディープラーニングのライブラリを開発しなければならない人、音声チャットサービスの原型を作る人、画像処理で人を認識するエンジンを作らないといけない人、といった専門人材は、数学的な理解が必要で、大学で工学科を出てないと難しいと思います。

一方で、誰かが作ったライブラリを使って自社のサービスに利用する、というレベルになってくると、専門人材である必要はなく、 エンジニアサイドの人が勉強すれば事足りる ということになると思います。

例えば、「自社にプライベートDMPを導入してデジタルマーケティングを強化したい」という目的であれば、マーケティングオートメーションツール、タグ管理ツール、コンテンツマネジメントシステム等々、全て外部のサービスをどう組み合わせるか?であって、トレジャーデータなどになってくると主要なツールとは簡単に連携できるように準備されています。このレベルであれば、情報システム部門の人とマーケティング部の人が連携すれば事足りてしまいます。

転機が明確になったのは、「GoogleがTensorflowをオープンにし、IBMがWatsonの門戸を広げたとき」だったと思います。

全てのアルゴリズムを自社で作り上げる必要があるのであれば、「統計学」に深い造詣のある人材が各企業に必要となりますが、それがサービスとして提供されるのであれば、”何が出来て何が出来ないかわかっていれば良い”ということになります。

一方で求められているのはビジネス視点

寧ろ不足しているのは、”統計学の素養があるマーケター”の方です。

多くの企業でマーケティング部に居る人は文系社員で、統計学についてはせいぜい大学時代にSPSSSASを使っていました、というレベルであり、使うのは専ら因子分析や線形回帰分析などです。勿論、彼等がエンジニアのように引き続き勉強してくれたら物事は解決するのですが、元が文系だと改めて学習するのが辛いこと、普段使い慣れていないコードの入力が必要なこと、などで思ったように勉強が難しいのではないかと思います。

冒頭の「”データサイエンティスト”達から文句を言われている”自称データサイエンティスト”」とは、恐らくこの手の見よう見マネで統計学を復習しはじめた文系マーケターのことではないかと思います。

他方、”データサイエンティスト”側は、エンジニア上がりや学者上がりのことが多く、「ビジネスの視点」というのが不足しています。

「A/Bテストをして良いサイトデザインやバナークリエイティブを残す」などの試みはやって頂いて構わないのですが、「それはビジネスに対してどの程度利益が出るのか?」という視点が抜け落ちています。もし、この辺りの勘所を”データサイエンティスト”たちが鍛えられれば、マーケターという職種に鞍替えできるのではないか?と思います。

”データサイエンティスト”が”自称データサイエンティスト”に仕事を奪われているのは、アサインする側の経営者サイドと会話が成立していないからです。彼等の視点は常に”ビジネスへのインパクト”です。全ての業務をそこから逆算して考えるクセがついていないと会話になりません。

例えば、この本にあるように

「月額6000円でマニアだけが加入するもの」だったADSLを「生産ロットを増やしてモデムが安くできるなら、月額2830円で100万人が入ってペイするもの」にしてしまえばいい!

と発想ができるかどうか? です。

データを取得するのにかかるコストを弾くのはエンジニアに頼むとして、そのデータを取得することでどのようなリターンが見込めるか?を考えて提示する能力が求められています。

幸いにも、工学科出身でビジネスコンサルタントをやっている人は世の中に大量に居ますので、”データサイエンティスト”側からマーケター側への転向は、マーケターが統計学のスキルを強化するよりも早くたどり着けるのではないか?

と文系でマーケティング業界の端っこに居る私は思います。


参考図書

大局的な視点を得る為に良い本

幾つかの企業のビジネスモデルが分析されていますが、特に、 外側からはわからない「コスト構造」までインタビューしている 本は貴重です。

タップスと言えば人工知能や宇宙開発という変わった会社ですが、佐藤さんの先を読む力は飛び抜けていると思います。本書では、仮想通貨ブームを人々の経済の在り方の視点にまで広げて見ています。

視点が大事、という意味ではやはりこの本が一番でしょうか。書いてある通りに発想するのが難しいんですよ、とは思うものの、出発点の視点がとにかく大事です。