細部にこだわることがクオリティを上げる_シズル感
先日、ピエロ映画特集を見てきまして、ほとんどは苦手な恐い映画だったのですが、その中で一作、観て良かったなぁと思う作品がありました*1
レビューは良くない「ピエロがお前を嘲笑う」
鑑賞後にレビューサイトを見ると、面白いと言う人と、面白くなかった人とに結構別れている作品。
ユーザーレビュー - ピエロがお前を嘲笑う - 作品 - Yahoo!映画
Who Am I - Kein System ist sicher: - Keine Info - 映画 感想 - 鑑賞メーター
そもそも原題は「Who Am I」であって、邦題の付け方が不幸を招いたのだと思います。
ドイツ?米国?での予告⇒
日本の予告⇒(*ネタバレが多いので楽しみたい人は見ない方が良い予告)
日本の宣伝では、「どんでん返しがあるから嬉しんでね!」という方針のようですが、
実際の作品はどんでん返しも面白いのですが、「ハッキング以外何も取り柄がない少年が偶々出会った全然違う系統のオッサンと出会って、持ち前の特技を活かして新しい人生を歩み出す」という方に重きがありました。
憧れていた天才ハッカーに振り向いて欲しくて頑張るのになかなか認められず、、、という所は、結構胸を締め付けるシーンでもありました。
デジタルな空間の描写が良い
拘りとも言えるのが、ハッカー同士が交流するサイバー空間を暗い電車の中で描写しているところ。
who am i 映画 サイバー空間 - Google 検索 (※ちょっと違う画像も検索でヒットしますがマスクした人が地下鉄車両内で対峙してる画像です)
その他、取調室でのシーンとした空間の演出、ハッキング中にテンションを上げて屋上で叫ぶシーン、etc 確かに中二的な要素が好きな人にはたまらない仕草がちょいちょい挟まれていて、そういう細部の拘りがフィルムの質を上げていると思います。
フェティシズム
例えば自分の好きなアニメのOPの一つに「新世紀GPXサイバーフォーミュラ11」のOPがあります。*2
名作!新世紀GPXサイバーフォーミュラ11 名シーン ‐ ニコニコ動画:GINZA
レンチをクルクル回すシーン、タイヤが回るシーン、ベルトを締める動作、眼鏡の反射、画面に入り込むフレア、ゆらゆらと動くレーシングマシンetc これでもかという拘りがあります。
やっぱり好きな人は多いようでこんなMAD動画もあります。
[MAD]サイバーフォーミュラ11 OP風 - YouTube
フェティッシュな拘りが感じられます。
シズル感
広告業界では「シズル感」という言葉あります。
食品やビールの映像や写真を見た時に、如何にヨダレがでるような映像にできるか?ビールの泡立ち、缶についた露、肉汁の焼ける音etc
先ほどのサイバー空間や車のシーンの拘りですと感情に個人差が大きくなりますが、食品関連だと誰もがほぼほぼ共通して同じ所にシズルを感じるため、とても重要です。
フェティシズムは細部なので議論から見落としやすい
先ほどの映画「Who Am I」をストーリーだけ追って分析してしまうと、どんでん返しが予測できるのか?できないのか?月並みなのか?といった議論に終始してしまい、何が観客の情動を刺激するのかがわからなくなってしまいます。
この事については、以前 書きました。
人が「萌える」ポイントを探して掘っていくことが重要だと思います。
モックアップの時代
ちょっと前に読んだ本の中で面白い指摘がありました。
クラウドファンディングで人を集める為には、企画のロジック自体も重要なものの、サンプルつまりモックアップの見た目の完成度が高いかどうか?がとても重要、という指摘です。
メイカーズ進化論―本当の勝者はIoTで決まる (NHK出版新書 471)
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3Dプリンターの出現によってそれが可能になったことが大きい、という指摘もありました。idarts.co.jp
人は映像・画像に弱く、直観的に判断したことに後からロジックをつけて納得している、とも言われますが、立体物の手触り感、写真の手触り感は重要です。
キャッチコピー開発は、言葉で簡単にロジックが説明できるがゆえに誰でも議論がし易く、何度も会議でチームで検討しますが、
一方で、如何に一枚のビジュアルの完成度を高めることができるか?如何に萌えるシーンを繋げることができるか?などの直感的な訴求はなかなか普段議論できていないのではないかと思います。
ピクサーは絵コンテをラッシュにして議論する
少し古い本の記載ですが、ピクサーでは脚本ベースの打合せよりも、絵コンテに落としてさっさとラッシュにしてチームで議論する、ということを行っているそうです。
ピクサー流マネジメント術 天才集団はいかにしてヒットを生み出してきたか
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言葉だけでなく如何に直感的なシーンの良さの精度を上げていくか?
の一つの解法だと思います。