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『僕だがいない街』は、ミステリーや推理小説ではない

 早速ですが、『僕だけがいない街 (6) (カドカワコミックス・エース)』 6巻を購入して読みました。今回も感動です。

 この作品については、以前も指摘しましたが、(yyhhyy.hatenablog.com) 努力・友情・勝利というジャンプ方式が見所の作品です。

 全く個人的な見解で、本作の特徴を羅列していきますが、本作は、とても応用の効くある重要な要素を抑えていると思っています。

推理小説ではない
 正確に言うと、推理小説のように楽しむこともできます。犯人は誰だろう? この人だろうか?この人も怪しいな?。。。
 そういう楽しみ方もできますが、推理小説というのは、先が読めてしまったら終わりですし、もはやミステリーファンの人たちは、著者がどういうテクニックを使ったのかという技術的なことに興味が行っている場合もあります。
 しかし、本作は、犯人が誰であろうと推測することとは関係なく、面白いのです。というよりも、途中で犯人が公開されてしまいます。

サスペンスでもありません
 人が殺されますので、充分サスペンスの要素があり、ハラハラドキドキするシーンもありますが、そこも楽しみ方の主眼ではありません。もっと、ほのぼのするエピソードのパートの方が長いのです。

SFでもない
 本作の主人公は、過去にタイムスリップすることで、過去の事件を解決していきます。しかし、SFも主戦場ではありません。そのタイムスリップの設定が主戦場であれば、他にもタイムスリップする者が現れたり、このタイムスリップが大きな鍵となって物語が進むべきでしょう。

主人公の成長・周囲の愛が熱い
 犯人が早々に予想されようが、或いは、ミスリードするには、テクニックが足りなかろうが、恐怖やスリルが足りなかろうが、SFの設定が物語に対して絡んで来なかろうが、本作の主戦場はそこではないのです。
 しがない漫画家(の卵?)で、生活も苦しく友だちと言える人も少ない、仕事の仲間とも挨拶程度、という人として終わっている状態の主人公が、過去に戻って事件を解決していく物語ですが、ポイントは、
 一歩踏み出す勇気がなかったところを今度は踏み出して他人を救おうとしてみた
 という所です。
 それによって、主人公は、友達が増え、親との距離も縮まり、そしてより一層、他人に対して思いやりのある人間へと成長していきます。 もう最新巻の病院での少女とのエピソードは、最高に良い場面でした。 主人公が勇気を出したことにより、周囲の友達も勇気を出し、みんなが一回り大きな人間へと成長するポジティブな連鎖の物語です。

バタフライ・エフェクト」とも違います
 タイムスリップして過去の事件を解決しようとする物語は、沢山あります。僕が好きな「時をかける少女」(アニメ版)もそういう話ですし、世の中的に有名なのは、「バタフライ・エフェクト」 かもしれません。
 しかし、これらは、あくまでも特定の人物だけが、タイムスリップの機能を使って、過去を良くしよう、としているだけです。一歩勇気を出すことで、周りを巻き込んでいく物語ではありません。

実はジャンプでもない
 主人公を中心に、努力・友情・勝利で物語を回すジャンプの方式は、近年でも「イナズマイレブン」「ソードアート・オンライン」などの人気作に共通するフォーマットですが、だいたいに置いて、最初から主人公は、結構良い奴です。
 ですが、本作の主人公は、最初はほんのちょっと良い程度で、周囲を巻き込み影響を与えるタイプではありませんでした。しかし、巻が進むにつれて、勇気を出すことの喜びを覚え、すっかり良い奴に成長する、等身大の主人公です。最初から強い人ではありません。

この特徴は、実は応用が効く
 推理小説でもサスペンスでもSFでもジャンプでもない、と極論を言いましたが、本作のような主人公の成長と周囲を巻き込む情熱的な物語というのは、何にでも共通して使えるフォーマットであるということです。
 淡々と読者との駆け引きで推理小説を作る人は、そのテクニックをどんどん磨かなければいけません。SFであれば、どんどん新しい設定を思いつかねばなりません。一方で、本作のように、等身大の主人公がほんのちょっとした進歩をきっかけに大きく成長して行く物語の筋が一本通っていれば推理小説的に不備があろうと、SFの設定の活かし方が足りなかろうと、全くもって面白い話になるのです。
 技工に凝るのではなく、物語を紡ぎましょう!