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【書評】『真中市から遠く離れて』

 先般、@chumatsu11氏の『真中市から遠く離れて』が公開されました。
 その際の私の感想が余りにも短すぎる!というご指摘を頂きましたので、改めて感想をまとめたいと思います。

 ↓因みにその時のツイートは、これ↓

前提として
 知り合い補正はあります。
 「作品は、客観的に判断すべきである」というのは、近代のデカルト的な視座に基づく考え方で、既にポストモダンの現在では、作品をコンテクストから独立して評価するというスタンスが有り得ないのは、言うまでもありませんが、
 やはり、著者を知っているかどうかでは、作品に対する感想も思い入れも変わるというものです。たとえそれが、リアルに会った人でも、SNS上の知り合いでも、昔からファンだった個人であったとしても、今日では避けられないでしょう。

 本題に入ります。

青春小説として楽しめる
 色々な方が色々な感想を持ちうる作品なのですが、私はこれを「青春小説」として読みました。
 主人公が困難に遭遇し、それを仲間と共に乗り越えていく、、、物語の王道
 昨今のライトノベルは、セカイ系のウジウジした主人公から、熱く戦う主人公に変わってきている、という指摘を過去に読んだことがありますが、正にそのようなライトノベル読者層も楽しめる、青少年の物語です。
 個人的には、ここが一番のベネフィットだと感じたので、そういう物語を求めている人に、あうのではないかと思います。
 王道でちゃんと読ませることができる作品というのは、意外に多くないものです。

 ※「熱い主人公」と言う時、一部のライトノベルは主人公が感情移入できないまでに恵まれた能力者で強すぎる(俺ツエー!)場合がありますが、本書はそのようなタイプの主人公ではありません。

最後まで一気に引き込まれる
 物語を先へ先へと進めるには、常に事件がなければ、いけません。大きいこと、小さいこと、そしてそれが、ただ単に伏線を張りたいだけの著者都合で挿入されると読者は興醒めしてしまうものですが、本書は正にそこが巧みで、一気に最後まで読まされます。 自分が何日で読んだか忘れましたが、平日を除いて数日で読んだ記憶があります。(因みに、この小説、かなり長いです。)
 謎の登場人物”日光仮面”や、突如来た怪しいStranger、そして急転直下の災害、思わぬ友の変化、etc 3部構成の中でも幾つも事件が繋がって、最後まで進みます。
(ネタバレを避けながら紹介するのは難しいですね)

自分の経験と重なる所がある
 例えば、少年時代の活動範囲がせいぜい自転車で行ける範囲だったり、そこから一歩飛び出すときのワクワク感だったり、、、大人になって忘れがちな感覚というものがありますが、本書は、どこかに必ず、過去・或いは今の自分に、ふと刺さる所があるのではないかと思います。
 自分の琴線に触れたシークエンスから、ダイアログを勝手に引用しますが、
 過去に中の良かった人と主人公が会って会話するシーンで、 ”まさに自分のことを指摘されている!”と、ゾクッとしたシーンがあります。
 


「どうして話してくれないの?」

「なにを?」

「大切なことを隠してるでしょう?」

「何も隠してないよ」

「あなたが何も話さないから、誰もあなたに何も話さないんだよ。だから長い時間、当たり前のことが当たり前に起こり続けて何も変わらないでいるんだよ」

 自分のことを話せない というのは、プレゼンテーションスキルがある/ない という浅い次元で発生する問題ではなく、自分自身では何もかもちゃんと開示して話しているつもりなのに、実際にはちっとも中身がない、という状態のことです。
 自分自身の中にコレと言って話すべきコトが存在しない、或いは、他人を揺り動かす程のレベルのことを考えられていない、状態では、パッションが足りません。情熱的に生きていない人には、他人も興味を持てません。それは、すべてはモテるためであるの中でも同様の指摘があるのですが、この本を読んだ時のことを思い出しました。
 この引用箇所に限りませんが、そこかしこに、共感できるシークエンスがあると思われます。

どうも野郎が好きらしい
 私の感想は以上になりますが、どうも周辺の読んだ人の反応を聞くと、男性には受けて、まだ女性の支持層がいないそうです。主人公がヒロイックな物語は、比較的男性受けが強いものだということなのか、自分が女性ではないので、真意はわかりませんが、それはまた新たに読んだ人が分析してくれると興味深いな、と思っています。



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真中市から遠く離れて

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