遅ればせながらアニメ版「ベン・トー」を全話見ました。”なかなか面白い”というツイッターの評判を聞きながら、先延ばしにしてきたことを後悔するような名作でした。
青春小説のようにピュアな主人公が成長していく姿こそがライトノベルの醍醐味の大きな要素だと常日頃思っているのですが、本アニメはまさにそのような作品で、1つのことにここまで”熱くなる”という体験をしたい!と心に再び火がつきました。
勿論、最終話まで見て欲しい作品ですが、その中でも、個人的に琴線に触れかつ大人であれば感じる所があるであろう話数が、第3話です。
第3話までの概要*ネタバレを含みます
スーパーのタイムセール半額弁当を巡って若者たちが争奪戦を繰り広げ、猛者には、通り名がついている本作の世界。主人公は、貧困から半額弁当争奪戦に参加するようになりますが、その公正なルールのもとスポーツで勝つような興奮と勝った後の弁当の旨さに惹かれ、半額弁当争奪を目的とした同好会(ハーフプライサー同好会)になし崩し的に入会します。
しかし半額弁当の獲得は容易ではなく、なかなか勝てるものではありません。(負けたらどん兵衛を買います)
そんな中、剣道部は、個の闘いではなく、数の力を使い、確実に弁当を獲得する戦法を取ります。(具体的には、壁を作って他の人々を弁当に近づけさせません)
剣道部主将は有能な新入部員獲得のために、ハーフプライサー同好会で力をつけてきた主人公佐藤にし、”うちなら確実に弁当にありつける”と、ひもじい思いをしていた彼を誘惑するのです。
チーム戦であっさり半額弁当を手にしてしまった佐藤はしかし、必死で闘い抜いた末に獲得した時の半額弁当と比べて、どうしても旨くないことに違和感を覚えるのでした。。。
(*以下、省略。詳細は作品を見て下さい!)
チームワーク V.S. 個人の自己実現
社会人になって仕事をすると、圧倒的にチームで仕事をする機会が増えます。自分のスキルも時間も経験も人脈も有限ですが、詳しい人が直接の知り合いや知り合いの知り合いに居ることで、1人ではできなかったことを成し遂げることができるようになる、という経験は誰しも持っていることだと思います。社会に於いては、スーパーマンの個人力に頼るだけではなく、ごく普通だけどちょっとだけ凄い所がある人たちの力を如何に効率的に活用できるか?のマネージメントにかかっていると言っても過言ではありません。
この第3話でも、剣道部がまさにその組織力で、1人1人は、弱いけれど皆で協力することで、半額弁当にありつきます。
一方で、ハーフプライサー同好会は、あくまでも個人の闘い。時に共闘することもありますが、常に同じ半額弁当を取り合う敵同士であることは部員であろうとも変わりません。正々堂々と場のルールを守り、強い敵と真剣勝負をして半額弁当を手にする喜びを重視します。(粋なことに同好会の先輩は、それを口では説明せず、主人公自らが気がつくように待ちます。)
この後者の生き方は、一見すると、組織よりも個人の自己実現を重視し、実社会に於いては、一人よがりに写るかもしれません。しかし、ライバルと切磋琢磨する闘争心こそが、1人1人の能力を磨き、モチベーションを高く保つために必要なことであることも事実ではないでしょうか?確かに組織力をつけることは大前提でやるべきことではありますが、個人のモチベーションが高い組織とモチベーションが高くない組織では、勝敗は戦う前から決まっているものです。闘争心がなければいずれ競合に抜かれ、差が開いてしまっているでしょう。
僕は、「ベン・トー」第3話を見ながら、架空の世界観設定の中の、更に小さな街の中のバトルを題材にしているにもかかわらず、実に本質的な問題を捉え、人の生き方を見直すきっかけにまでなっていることに、感心せざるを得ませんでした。
本作は、その他にも、公正さとはなにか? 闘いとは何か? ライバルとは何か? という本質的本能的な所をついてくる名作です。 半額弁当を取り合う、というだけで、1話完結型12話を飽きさせないというのは、相当な脚本力と演出力です。
是非見て下さい
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