リトルウィッチアカデミアはアニメらしいアニメ
2週間限定で公開している『リトルウィッチアカデミア』見ていない人には是非観て頂きたいです。
とてもアニメーションらしいアニメーションでした。
映画『リトルウィッチアカデミア 魔法仕掛けのパレード』第三弾予告 - YouTube
個性的なキャラクターの表情が生き生きとしていて、とても可愛い作品です。ファンタジックなパレードから始まる第1作の冒頭もとても美しい。
アニメと実写の役割について
ノイタミナのように、実写ドラマでやっても良いような作品をアニメ化することがありあます。
一方で、大根監督の「モテキ」のように、実写の中に漫画チックな表現手法を入れるものがあります。
或いは、「パリフィック・リム」「トランスフォーマー」のように、CGで実写映画化するものがあります。
夫々に、特徴があって、どれがあっているどれが得意というものがあると思いますが、
「リトルウィッチアカデミア」は、アニメーションでやって良かったなーと思える美しい作品でした。
例えば、実写では役者の顔の表情に限界がありますが、アニメーションでは、目玉を大きく強調することもできます。手間はかかりますが、豊かな表情を強調することで、印象的に感情を表現できます
リアリティとは何か?
大塚英志さんが色々な著作で繰り返し述べている「死なない身体」の話。
途中まではどれだけ殴られようが打たれようが死なない身体だった戦中の漫画のキャラクター達が、ある回でミッキーのようなキャラクターの飛行機からの射撃を受けた少年が「あっ!」と言って血を流して死んでしまう。
それまでは、「このファンタジーの世界では人は何をやっても死なない」という”文法”を理解していた読者にとっては、「えっ!」と思うシーン。
このように人間には、空想の物語に対して、その物語が前提としている”文法’を理解した上で物語を消費することができます。登場人物が血を流さなかろうと、「この作品ではそういうことになっている」で済ますことができます。
ファンタジックな世界の話であれば、「これはファンタジー」だからと前提を理解して見ることができるので、「リトルウィッチアカデミア」で主人公が魔法を使おうが、やたらデカい目をしていようが、何であろうが気にならない。
積極的に使った方が良い”文法”と使うのが難しい”文法”
「これはそういんもんだ」を納得させるのが難しい設定もあります。
例えば戦争もののように、大人がいないとおかしいのに子どもに活躍させたい場合など、、、読者・視聴者が子どもでったあり、大きな子どもである為にどうしても主人公を子どもにしないといけないケースでは、
・「子ども達だけ残して遭難させてしまう」⇒『十五少年漂流記』『機動戦士ガンダム』
・「子どもしか操縦できないシステムになっている」⇒「エヴァンゲリオン」
・「子どもの頃にしかその能力がない」⇒「ナルニア国物語」(最近なら「Charlotte」)
・「隔離された学校の世界という設定にする」⇒最近のラノベ
など色々な理由を最初に作ります。
そういう準備を無視していきなり子どもが活躍し出すと、視聴者は”文法”に納得することができません。
リトルウィッチアカデミアの”文法”の提示はとても秀逸
多くの場合その”文法”を説明する為に、第1話や冒頭に世界観の説明のパートが入ります。
「リトルウィッチアカデミア」も、「魔法」「子どもが活躍」などの”文法”を設定するために冒頭に世界観説明シーンがありますが、本作(アニメミライ1作目)の冒頭は、とても秀逸で、一気に引き込まれてしまいました。
「美しい魔法のショー」「それを見て魔女に憧れる少女」
⇒魔法少女見習いが学校で奮闘する話へ
ここまでの流れがファンタジックで色鮮やかで、巨大な少女の瞳の中に映るかっこいい大人の魔女、というシーンは、アニメーションならではの表現だと思いました。
表現媒体ごとの強み
アニメーションならではの演出とは何でしょうか?
漫画には漫画の「コマ」でしか表現できない演出が
小説にも小説にしか表現できない「地の文」というトンマナの表現手段があります。
アニメーションの場合は何でしょうか?
昔の東映動画の長編アニメーションを見ると、ファンタジックな色使いが、今見ても美しいですし、
タイガーマスクのような劇画風の作品であれば、心象風景を説明する真っ赤な背景など、
実写では普通やらない演出技法があります。
「リトルウィッチアカデミア」は、「これはアニメーションで表現して貰ってほんとに良かったなー」と思える作品でした。
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東映動画の長編で美しい作品の一つ。タイトルに騙されてはいけない。パッケージをよくみて下さい。オジサンのガリバーが活躍するあの昔ながらの話ではないです。