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【ネタバレ有り】ニセコイ#19の秀逸なラブコメ脚本構成について

今期(2014年4〜6月)のダークホースは、「ニセコイ」でした。
*正確には、2014年1月クールから作品でもあります。
第1話の時点から、映像・音楽の演出が美しく、シャフトも一弾表現の幅を広めたなーと思っていましたが、
昨日放送のニセコイ#19では、
ストーリーの構成も秀逸だなぁと改めて関心しました

ブコメの中でも、本妻が確定していない作品は、主人公と誰かがゴールインしてしまうと終了してしまうため、
三角関係や四角関係を長々と続けなければならない、という宿命があります。
かと言って、主人公がいつまでも優柔不断だとどうしても飽きが来てしまうので、
実は、とても難しいジャンルだと思います。

※ 以下、ネタバレを含みます



■ 与件の整理 : ニセコイの基本構造 #19時点
・主人公(男):一条 楽 *小野寺さんが好き。桐崎さんとは、偽の恋人関係だったが意識を始めている。
・ヒロイン1 :桐崎 千棘 *主人公と、 偽の恋人関係 を演じるていたが最近は意識し始めている。
・ヒロイン2 :小野寺 小咲 *楽が惚れている。かつ楽に惚れている。鈍感なのでお互い気がついていない関係
・ヒロイン3 :橘 万里花 *婚約者。警察の娘。主人公にべた惚れで、そのことについてとてもオープン

■ #19の主題 : 主人公とヒロインに、ロミオとジュリエット を学園祭で演じさせる
ブコメにはよく出てくる ロミオとジュリエット
一般的には、
「偶然やることになって、お互い意識しているけど恋人未満という主人公とヒロインに演じさせ、
恋路の邪魔が入ったり、逆に恥ずかしがって言った言葉がお互いを傷つけて献花したり、
それをを乗り越えさせて、二人の距離を縮める。」
という使い方をされます。

本作の場合は、
・2番目のヒロインの小野寺さんの見せ場を作る
・1番目のヒロインの桐崎さんと、前話から喧嘩しているので、仲直りさせる
・主人公の成長を描く
という3つのミッションをこなしています。

特にこの作品の場合は、小野寺さんと桐崎さん両方にファンが多いため、両方の見せ場を作らなければ、
読者・視聴者が離れてしまいます。
2人のヒロインの見せ場=主人公との距離を近づける シーンを均等に作っていかなければなりません


■ 流れ(#18も含む)
・楽と桐崎さんが ロミオとジュリエット役になるが、喧嘩しているので、ヒロイン1は断る
・楽と小野寺さんが、ロミオとジュリエット役になる
・暫く小野寺さんの見せ場(台詞に恥ずかしがるとか、衣装を着てより可愛くなるとか)
・その間、楽は桐崎さんと仲直りしようとするが、すれ違って更に喧嘩
・当日、小野寺さんが友達を助けようとして舞台で怪我をする ⇒ 退場
・小野寺さんの姿を見て、楽が決意をする ★ポイント
・楽が桐崎さんに代役をお願いする ★ポイント

■ 代役をお願いするシーンが秀逸
本作の場合、小野寺さんの見せ場を作るために一旦小野寺さんがジュリエット役として立っているため、
「怪我をした小野寺さんの代役として、桐崎さんにお願いする」というかなり虫の良いお願いをすることになります。

その際、「ゴメン!俺が悪かった!許して!お願い!」でも成立はしますが、
それだけでは、何て都合のいい主人公だよ!という反応がどうしても残ってしまうでしょう。
ヒロインとの距離を近づけることがマストになってきますが、
「お前が好きだとわかった!」まで、言ってしまうと、ルートが確定してしまい、お話が終了してしまいます。

そこで本作の場合は、
-------------------------
・怪我をした小野寺さんが、「みんな頑張ってたのに、悔しい」という ”みんなの為を思う姿” を楽に見せる。
・楽は、”自分が惚れている小野寺さんのため”+”みんなのことを思う小野寺さんに共感して”という2つの理由で行動をおこす
・楽は、”本命はやっぱりお前だよ!”という陳腐な口説き方ではなく、
 ”お前とだったら、偽の恋人を演じてきたし、上手くやれそうな気がする” 
 という合理的な根拠に基づく口説き方で、桐崎さんを口説く
 +
 前に傷つけた言葉を反省していることを伝える
 +
 ”嫌いじゃねーよ” というマイルドなラインで仲直りする
-------------------------
という流れになっています。

ここで”嫌いじゃねーよ”という距離感の言葉で、仲直りとして成立するのは、
桐崎さんに、その前のダイアログで、”あんたはあたしのこと嫌いだと思ってた”という内容を言わせているためで、
#18での喧嘩のきっかけは、”本当の恋人だったとしても、俺とお前、今みたいに喧嘩ばっかで上手くいってないだろうな”
という主人公の言葉が端を発していますが、
”あんたはあたしのこと嫌いだと思ってた”という誘導を挟んだことが、
極めて効果的に機能しています。


ここで、”嫌いじゃない” というラインで仲直りを演出できることで、
”楽が惚れている1番は、まだ小野寺さん”という状態を#20以降にも引き継ぐことができます。

本妻の決まっていないラブコメでは、本妻が決まってしまった時点で、お話は一旦終了ですので、
如何に本妻が決まらないように、しかし、夫々のヒロインと主人公の距離は進展させていく、か?というテクニックが重要になってきます。

■ 主人公が決意するシーンの動機も秀逸
また、もう1つ重要なのは、
桐崎さんの魅力を再確認して、主人公が行動を起こす、という関係ではなく、小野寺さんの志に賛同して、主人公が行動を起こしていることです。

これは、
惚れている人のためにただ単に惚れているからという理由で動く陳腐な主人公ではなく、
惚れている人の魅力(今回では みんなが頑張った演劇を成立させたい というヒロインの志の高さ)に賛同する主人公
を見せることで、
主人公の心の成長も描けています。

ブコメものでは、主人公が優柔不断で鈍感で奥手という ダメ人間になってしまうリスクがありますが、
本作では、主人公が他人想いでかつ熱い信念がある、ということも魅力の一つで、
それもこの#19で描けているのは、極めて秀逸だと思いました。

殆どのラブコメ作品は、主人公に棚ぼた式にヒロインが落ちてきて、ちょっと優しい程度の男がガンガンモテる話に陥りがちです。
説得力を持たせるには、主人公も魅力的でなければいけません。
この辺りは、変猫もとてもよくできていますが、ニセコイの主人公もまた、イザという時にとても熱い男なのが、
とてもよい魅力です。


以上、長々とした感想でしたが、
本当に、今回は、普段以上によくできている回だったなーと感激しました。



リスアニ!の最新号(vol17)は、ニセコイ特集でした。

完全に ANIPLEXさんの商売に乗せられている感がありますが、
とは言え、この作品とっても音楽の使い方も良いです。
※劇伴も素晴らしいですが、OPもEDもイヌカレー空間もとても素晴らしいです。
 早く音楽全集が出て欲しい!