広告/統計/アニメ/映画 等に関するブログ

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日清食品のアオハルシリーズはマスマーケティング時代のクリエイティブという印象が強い

先日「サザエさん編」が公開された日清食品のアオハルシリーズ(或いはハングリーデイズシリーズ)が個人的に 苦手 です。

news.mynavi.jp

嫌いな人の声

xn--h9jepie9n6a5394exeq51z.com

  • ハイジ編

matome.naver.jp

omoson.com

一言で言うと 原作と余りにも違い過ぎる のが嫌われる理由でしょうか。

制作側の気持ちもわかる

とは言え、原作者サイドも許諾を出していますし、

nlab.itmedia.co.jp

恐らくこういうIFも好きな人は好きでしょう。声優も豪華ですし絵の描き込みも綺麗ですね。

原作無視とは別の課題として「昔の広告」という感じがする

原作と設定も絵の印象も違うということも苦手なのですが、もう一つ 価値観が古い という点がこのシリーズの嫌悪感の理由の一つのような気がします。

劣等感に対する決めつけ

  • 読者モデルのクララが人気者でハイジがそれに劣等感を頂いているという設定
  • ハイジが劣等感を抱いているという前提で、それでもハイジが好きだというペーターが良い人に見えてしまう設定

いつの時代の空気感でしょうか?

今日日の高校生ならハイジは最初から劣等感を抱いていない と思います。

青春といえば恋愛という短絡思考

3作品ともテーマが恋愛ですが、青春ってそれだけなんでしたっけ?

例えば、ハイジが勉強家にクララがスポーツ少女に進化して高校生活をエンジョイしていたら、”2人とも苦手分野を努力して成長したんだなぁ ”と思うでしょうし、その2人が協力して文化祭や体育祭或いなど青春のワンシーンも幾らでも描けそうです。

恋愛がメインテーマではない原作に恋愛要素を入れてしまったから原作の雰囲気が崩されたと感じるファンが多いのだと思います。もっと違う「青春」を描けば、炎上も減ったのではないでしょうか?

決めつけが多いマスマーケティング時代のクリエイティブ

サントリーの炎上したPR動画はもっと上の世代の価値観でしょうか?地方に行って美女とワンチャンあると思うのはバブル時代に海外で女遊びをした世代の価値観なのだろうと思います。

www.huffingtonpost.jp

資生堂も「女は頑張っているように見えないようにせよ」という価値観もなかなか上の世代の価値観だと思われます。

nlab.itmedia.co.jp

その他にも炎上CMは沢山ありますが、ここで喝破されているように「おじさん」的な価値観の表現です。

www.itmedia.co.jp

多くの普通の大衆にとってオジサン的な価値観は一般常識であって、TVCM用の表現としては正解なのだと思います。 インターネット上では炎上していても職場では全く炎上していなかったり、寧ろ炎上記事に対して大袈裟だと反応する人の方が多かったりするかもしれません。 ネットのマイノリティのトライブで炎上しても販売に影響する程のことではないのです。

とはいえ、 一人一人にパーソナライゼーションされたメッセージを届けたい というデジタルマーケティングの時代にいつまでもこのような表現を続けるのは社会的にも企業姿勢としても限界が来る手法なのだろうなと思います。

そういう時代になって欲しい という私の願望なのかもしれませんが)

こういうのを見たい

因みにTogetterの中に共感するコメントがありました

togetter.com

いやー、中島くんとカツオくんが大きくなっても一緒にカップラーメン食べてたり、久々にあってモジモジしてたけどキャッチボールして急に10年のブランクを乗り越えて一緒にカップラーメン食べて終る、とか、そういうのだったら凄く泣けますよね。もう設定を聞いただけで涙が出そうです!

Rで時系列データをクール単位で集計する

過去何度か時系列のエントリーで「xts」が便利だと書いて居たのですが、日足データを月次にすることはできてもクール単位に集計する便利な関数がない、ということに気が付き色々調べました。

事例としてJEITAの「民生用電子機器国内出荷統計」を使ってみます。

ダウンロード先はこちら http://www.jeita.or.jp/japanese/stat/shipment/

データのクオーター化

データについて

上記サイトから集めたデータは以下のような形をしています。

df <- read.csv("data.csv",header=T)
head(df)

このように右向きに時系列のデータが並んでいます。

              商品名     種別 X1月 X2月 X3月
1         薄型テレビ     合計  416  579  508
2         薄型テレビ 29型以下  103  147  180
3         薄型テレビ 3036144  207  160
4         薄型テレビ 3749114  157  112
5         薄型テレビ 50型以上   54   69   56
6 ブルーレイディスク     合計  216  272  272
7 ブルーレイディスク レコーダ  169  224  208
8 ブルーレイディスク プレーヤ   47   48   64

データの抜粋

このうち薄型テレビの合計だけを取り出します。 列名でデータを抜き出す為に「dplyr」を使います。

library("dplyr", lib.loc="C:/hogehoge/R-3.4.1/library")
dat <- df %>%
  dplyr::filter(商品名 == "薄型テレビ" & 種別 == "合計")
head(dat)
      商品名 種別 X1月 X2月 X3月 X4月 X5月 X6月
1 薄型テレビ 合計  416  579  508

ts型にするために

時系列にするためts型にしますが、先ず横向きに並んだデータでは上手く認識しませんので転置します。

head(t(dat))
       [,1]        
商品名 "薄型テレビ"
種別   "合計"      
X1月   "416"       
X2月   "579"       
X3月   "508"       
X4月   "309"  

最初の2行は数値ではないので、3行目からのデータを使います。

head(t(dat[1,3:ncol(dat)]))
       1
X1月 416
X2月 579
X3月 508
X4月 309
X5月 345
X6月 456

ts型にする

今回のデータは2014年1月からの月次データでしたので、スタートは2014,1、頻度は12ということになります。

dat_t <- ts(t(dat[1,3:ncol(dat)]),start = c(2014,1),frequency = 12)
print(dat_t)

自動的に月名が割り当てられます。 なおデータフレームではないので「print」でデータ確認します。

     Jan Feb Mar Apr May Jun Jul Aug Sep Oct
2014 416 579 508 309 345 456 395 305 515 337
2015 392 445 627 339 322 421 364 330 353 371
2016 348 381 510 334 350 332 374 325 374 352
2017 305 362 498 337 329 355 290 297 357 

ts型のグラフはts.plotで確認できます

ts.plot(dat_t)

f:id:yyhhyy:20171112175845p:plain

四半期(クオーター)データにする

「aggregate」関数を使います。 四半期データは3ヶ月ごとのため、 12ヶ月単位のデータを4分割することになります。

また、合計値にしたいためファンクションは「sum」を選びます。

dat_t_q <- aggregate(dat_t,nfrequency=4,FUN=sum)
print(dat_t_q)

クオーター単位に合計されています。

     Qtr1 Qtr2 Qtr3 Qtr4
2014 1503 1110 1215 1662
2015 1464 1082 1047 1529
2016 1239 1016 1073 1420
2017 1165 1021  944  

四半期データのグラフになりました。

f:id:yyhhyy:20171112180012p:plain

データフレームにする

データフレームにすると残念ながらts型で割り振ってくれた名称が消えてしまうため、データフレームにするには、時系列パートの列名が必要になる。 1

列名の元となるデータを用意する

dmn_1 <- c("2014年","2015年","2016年","2017年")
dmn_2 <- c("1Q","2Q","3Q","4Q")

組み合わせて結合する

for分を使って上記の組み合わせを作ります。 空のデータフレームを用意してrbindしていくことと、stringrパッケージを使って文字列を結合することがポイントです。

library("stringr", lib.loc="C:/hogehoge/R-3.4.1/library")
dmn <- as.data.frame(NULL)
for(i in 1:4){
  for(j in 1:4){
    dat <- str_c(dmn_1[i],dmn_2[j],sep='', collapse=NULL)
    dat <- as.data.frame(dat)
    dmn <- rbind(dmn,dat)
    dat <- NULL
  }
}
head(dmn)
            dat
1 2014年1Q
2 2014年2Q
3 2014年3Q
4 2014年4Q
5 2015年1Q
6 2015年2Q

ただし、今回のデータは2016年の3Qで終了ですので、数を絞る必要があります。 一度転置させないといけません。

dmn <- t(dmn)
TIME_dmn <- dmn[1:14]
head(TIME_dmn)
[1] "2014年1Q" "2014年2Q"
[3] "2014年3Q" "2014年4Q"
[5] "2015年1Q" "2015年2Q"

列名を使ってデータをデータフレーム化

先程用意した列名を使いながら、時系列データをデータフレーム化します。

dat_q <- data.frame(TIME=TIME_dmn,薄型テレビ_合計 = c(dat_t_q))
head(dat_q)
           TIME 薄型テレビ_合計
1 2014年1Q            1503
2 2014年2Q            1110
3 2014年3Q            1215
4 2014年4Q            1662
5 2015年1Q            1464
6 2015年2Q            1082

同様のことを複数データに行う

クオーター化を関数化

一連のデータフレームへの変化までを関数にします。

※列名は関数外です。

tv_goukei_func <- function(x){
  dat <- df %>%
    dplyr::filter(商品名 == "薄型テレビ" & 種別 == "合計")
  dat_t <- ts(t(dat[1,3:ncol(dat)]),start = c(2014,1),frequency = 12)
  dat_t_q <- aggregate(dat_t,nfrequency=4,FUN=sum)
  dat_q <- data.frame(TIME=TIME_dmn,薄型テレビ_合計 = c(dat_t_q))
  return(dat_q)
}

同様に、サイズ別のデータ用の関数も作ります

tv_goukei_func <- function(x){
  dat <- x %>%
    dplyr::filter(商品名 == "薄型テレビ" & 種別 == "合計")
  dat_t <- ts(t(dat[1,3:ncol(dat)]),start = c(2014,1),frequency = 12)
  dat_t_q <- aggregate(dat_t,nfrequency=4,FUN=sum)
  dat_q <- data.frame(TIME=TIME_dmn,薄型テレビ_合計 = c(dat_t_q))
  return(dat_q)
}

tv_29_func <- function(x){
  dat <- x %>%
    dplyr::filter(商品名 == "薄型テレビ" & 種別 == "29型以下")
  dat_t <- ts(t(dat[1,3:ncol(dat)]),start = c(2014,1),frequency = 12)
  dat_t_q <- aggregate(dat_t,nfrequency=4,FUN=sum)
  dat_q <- data.frame(TIME=TIME_dmn,薄型テレビ_29型以下 = c(dat_t_q))
  return(dat_q)
}

tv_30_func <- function(x){
  dat <- x %>%
    dplyr::filter(商品名 == "薄型テレビ" & 種別 == "30~36型")
  dat_t <- ts(t(dat[1,3:ncol(dat)]),start = c(2014,1),frequency = 12)
  dat_t_q <- aggregate(dat_t,nfrequency=4,FUN=sum)
  dat_q <- data.frame(TIME=TIME_dmn,薄型テレビ_30_36型 = c(dat_t_q))
  return(dat_q)
}

tv_37_func <- function(x){
  dat <- x %>%
    dplyr::filter(商品名 == "薄型テレビ" & 種別 == "37~49型")
  dat_t <- ts(t(dat[1,3:ncol(dat)]),start = c(2014,1),frequency = 12)
  dat_t_q <- aggregate(dat_t,nfrequency=4,FUN=sum)
  dat_q <- data.frame(TIME=TIME_dmn,薄型テレビ_37_49型 = c(dat_t_q))
  return(dat_q)
}

tv_50_func <- function(x){
  dat <- x %>%
    dplyr::filter(商品名 == "薄型テレビ" & 種別 == "50型以上")
  dat_t <- ts(t(dat[1,3:ncol(dat)]),start = c(2014,1),frequency = 12)
  dat_t_q <- aggregate(dat_t,nfrequency=4,FUN=sum)
  dat_q <- data.frame(TIME=TIME_dmn,薄型テレビ_50型以上 = c(dat_t_q))
  return(dat_q)
}

関数を順番に適応

これらの関数をデータに適応しデータフレームに結合します。

df_tv_goukei <- tv_goukei_func(df)
df_tv_29 <- tv_29_func(df)
df_tv_30 <- tv_30_func(df)
df_tv_37 <- tv_37_func(df)
df_tv_50 <- tv_50_func(df)

df_q <- dplyr::full_join(df_tv_goukei,df_tv_29)
df_q <- dplyr::full_join(df_q,df_tv_30)
df_q <- dplyr::full_join(df_q,df_tv_37)
df_q <- dplyr::full_join(df_q,df_tv_50)
head(df_q)
           TIME 薄型テレビ_合計 薄型テレビ_29型以下 薄型テレビ_30_36型
1 2014年1Q            1503                   430                    511
2 2014年2Q            1110                   336                    323
3 2014年3Q            1215                   321                    411
4 2014年4Q            1662                   457                    524
5 2015年1Q            1464                   536                    447
6 2015年2Q            1082                   330                    328

グラフ化

ggplot2を使います

library("reshape2", lib.loc="C:/hogehoge/library")
library("ggplot2", lib.loc="C:/hogehoge/library")

日本語の列名は時にggplotで時系列の順番が狂いますので、reorderを使って並べ替えます。 そのために番号を先ず振ります。

df_q$num <- rep(1:nrow(df_q))

今回はfacet_wrapで種類別にし、凡例の位置をtiopへ、また塗りつぶしの色を手動で指定しています。

df_q_m <- melt(df_q,id.vars = c("TIME","num"))
head(df_q_m)
g <- ggplot(df_q_m,aes(x=reorder(TIME,num),y=value,group=variable,fill=variable))
g <- g + theme_classic()
g <- g + geom_bar(stat = "identity",position = "stack")
g <- g + facet_grid(variable~.)
g <- g + geom_text(aes(x=reorder(TIME,num),y=value,label=value),vjust=-0.5)
g <- g + scale_y_continuous(labels = scales::comma,limits =c(0,2200))
g <- g + ylab("")
g <- g + xlab("")
g <- g + ggtitle("薄型テレビ量販店四半期販売台数数位")
g <- g + scale_fill_manual(values = c("brown4",
                           "deepskyblue4",
                           "deepskyblue3",
                           "deepskyblue2",
                           "deepskyblue1"))
g <- g + theme(legend.position = "top")
g <- g + theme(axis.text.x = element_text(angle = 45, hjust = 1,size=6))
plot(g)

グラフを保存します

ggsave(plot=g,filename = "g-3.png",scale=2,height = 2.5,width = 5)

f:id:yyhhyy:20171112190139p:plain


  1. ほんとはもっとスマートな手法があると良いのですが。。。

セミプロの時代

最近ライブコマースが熱いのに知らないの? という同僚からの煽りと、 プロゲーマーは競技系だけではないぞ? という趣旨のツイートを見て、 セミプロの時代 が本格的に来たんだなと思いました。

比較的最近のセミプロ

ライブコマース

個人が通販をするようなものです。

Candeeさんは100本動画作るよ!とか起動力のある会社ですが、会長が國光さんなんですね。 元は映像制作会社のプロデューサーだったのですがアグレッシブにいつの間にか時代の寵児です。

jp.techcrunch.com

ゲームアプリでも東大発ベンチャーで有名なところがありますが、最近の東大生は起業家精神がありますね。 jp.techcrunch.com

実況

これはワザワザ引用せずともみんなご存知でしょう

  • ゲーム実況(ニコ生/Youtube
  • 商品紹介(Youtuber)

ライブ的な消費形態として紹介されることが多いですが、これも視点を変えれば「セミプロ」です。 過去はファミ通のプロのライターがゲームの評価を下していましたが、今は個人のプレイを見れば良いんです。

個人のラジオのような配信

ラジオパーソナリティのようなものもプロだけでなくセミプロが活躍しています。

  • TwiCas
  • MixCannel

因みに私は夜中に個人のカラオケを聴くのが趣味です。

もっと色々、セミプロが活躍するものはあります

比較的この数年の動きとしては、以下のものがセミプロが活躍している分野です。

  • 先生(Schoo)
  • 宿泊(AnB)
  • 運転(Uber

AnBやUberはテクノロジーやシェアリングエコノミーの文脈で語られることが多いですが、個人がプロと同じようなことをしている、という視点でも捉えることが可能でしょう。

もっと大きな流れとして捉えたい

昔から「セミプロ」は存在する

実は随分昔からセミプロはありました。

  • 口コミサイト:プロの評価を集めた本や雑誌から個人のレビューサイトへ
  • ブロガー:プロのライターから個人のライターへ
  • 読モ:最近はもはやタレントや事務所所属してる人も多いですけど元は読者です。

特に小説・音楽の分野は進化が早い

比較的古い記事を探してみました。

diamond.jp

電子書籍ブームというのがありましたね。

そして今では「なろう」から普通にアニメ化されていきます。ちょっとバブリーな感じもありますが。

matome.naver.jp

その昔、 ケータイ小説 というのがあったのを覚えていますでしょうか?

matome.naver.jp

2chのスレッドが本になり映像化され、という頃には全くその意識がありませんでしたが、 この頃からコンテンツを作るのが、プロだけでなく、アマチュアが増えました。

所謂、「P」という人達もセミプロです。本職は別にあります。音のクオリティもプロの方が高いです。 演奏してみたシリーズも未だに人気ですね。

中央集権的な信用から個人に信用がスライドしている

10年前、Wikipediaの新興に関連して当時随分と売れた本があります。

つまり これからは集合知 という話しです。そして今は ブロックチェーンによる非中央集権的信用 へと進歩しています。

www.businessinsider.jp

プロが介在しない個人間取引というものは危険がつきものですが、いずれ技術が解決してくれることでしょう。

matome.naver.jp

ウーバーイーツもローンチ初期ほどトラブルは聞かなくなりましたね。

プロの提供するものからセミプロの提供するものへ

アニメが某映画作品によって2兆円市場になりました!とは言うものの全然プロは儲かっていません。

www.nhk.or.jp

この番組では下請け構造に焦点を当てたようですが、実態はそういうことではなくて、そもそも制作費はたいして増えていないのです。

jp.ub-speeda.com

一方でセミプロの市場は順調です。遂にアニクラは製作者への還元を始めたようですが、こういったセミプロのアニソンDJの周りにファンがついて消費をしています。

getnews.jp

今後のメインのモデルはアメブロ方式ではない。

ブログが流行った時にアメブロはタレントのブログを用意することでPVを稼ぎました。しかし今後はプロではなく セミプロ をどれだけ集められるか?が重要だと考えます。

ライブコマースもタレントを使うところ使わないところがあります。一部のタレントはファンがつくかもしれませんが、恐らくメインストリームはセミプロを沢山抱えるところになると思います。

gaiax-socialmedialab.jp

セミプロとプロの距離感の違い

作家がこれから食えなくなるだろう、と電子書籍で言及されたとき、今後はファンイベントで稼ぐしかない、と指摘している人が居ました。

音楽の文脈ではモンティ・パイソンのように直でファンとコミュニケーションしてグッズを売れと指摘している人が居ました。

ライブ型消費とよく言われますが、 身近な存在であるかどうか? の方が大きいのではないか?と思います。

実況主にファンがついてイベントするような市場規模のセミプロとファンというセミプロ市場が広がっていくでしょう。

かつてAKB48が目指したこの距離の市場が色んな分野に広まって行くのだと思います。

matome.naver.jp

ぶっちゃけ歌ってみたの人よりプロの歌手の方が上手いのです。それでも歌ってみたにファンがつくのです。

広告業界はどうするのか?

個人と個人の信頼関係に「ペイド」はあわない

読者モデルには商品を持たせて、タイアップ広告をしました。

ブロガーには商品を渡してレビューをして貰いました。

しかし、セミプロとファンの間の信頼関係に企業が金の力で入ってくることが今後も受け入れられるとは思えません。

みのもんたモデルはもう来ない

みのもんたが紹介したら商品が売れる、というレガシィなモデルの時代がありました。

matome.naver.jp

プロ ⇔ 大衆

という関係は、テレビの一方方向なコンテンツを楽しむレガシィな世代の消費と信用関係だと思われます。

もうご存知の人は少ないと思いますが、嘗ては、「新聞の広告はテレビより信用される」と広告業界では実しやかに言われていましたが、 今は新聞やマスメディアへの信頼は当時より低下し、権威のあるメディアだから信用できる、という構造ではなくなっています。

セミプロ ⇔ ファン

こういうビオトープがあちこちにできることでしょう。

健康食品販売が寧ろ近い

健康食品が高齢者にウケるのは健康への不安もありますが、家族より親身に話し相手になってくれる販売士に会いに行っているのです。

流石に何も買わないでセミナーに毎日行くのは悪いですよね?強制されなくても買ってしまうのは仕方がないことだと思います。

セミプロが紹介したくなる商品が売れる

身も蓋もない話ですが、セミプロが紹介したくなる商品が売れるということです。

例えば、けものフレンズが売れた理由は幾つもありますが、宣伝してなかったのにみんなが存在に気がついたのは、 「すご~い」「やった~」 などの広まり易いワードが極めて重要だったと思います。

animereal.hatenablog.jp

matome.naver.jp

「せっかく泣ける良い映像を作ったのに売れない!」などということはザラにあります。でも セミプロが紹介したくなる 要素がないとなかなかヒットしないのです。

今後アドマンは、 セミプロが紹介したくなるストーリー を作る能力が重要になってくるでしょう。


話は変わって、宣伝です。

今日、志村貴子原画展に行ってきました。

shimuratakako.gengaten.com

青い花」はほんと良い話なんでみんな是非見て下さい。

こういう地味だけど良い作品というものが紹介されやすくなるにはどういう仕掛けがあればいいんでしょうか?

だれか教えて下さい。

これからの広告・マーケティングビジネスの行方

マス広告が効かなくなったと言われ、デジタル広告がテレビ広告を抜く、という予測がある。

markezine.jp

しかし総合広告代理店は未だにテレビ広告に依存するビジネスモデルから脱却できず、デジタル広告分野ではコンサルティングファームに売上を掠め取られているのが現状だ。

toyokeizai.net

そこで、「マス」VS「デジタル」という対立軸に’ついて別の観点から整理し直したいと思う。

マス広告依存

マス広告依存から抜け出せない理由

例えば、日本全国規模でテレビスポットを1週間で打つと2億はかかる。逆に広告代理店側から見ると、プランニングと実施と報告で頑張るだけで2億の売上になる。例え競争入札で値引きをしていたとしても 人件費 はたいしてかからない。

一方で、デジタル広告で2億売り上げるのにはどれくらいかかるだろうか?

例えば、テレビスポットの補完としてWeb広告を打つと凡そテレビの10~15%を配分するのが適切だと業界内では言われている。すると、1キャンペーン辺りで2億×10~15%で、2000~3000万である。仮にスポットの後も暫くWeb広告を出稿するとしてもやはり1年くらいはかけないと2億円の売上にはならない。

そしてデジタル広告の場合は、何らかの成果をWeb上で測定できることが多いため、ターゲティングの見直しやクリエイティブの見直しを毎週単位で行う。その間、トレーディングデスクの人件費、マーケッターの人件費、営業の人件費が発生する。

殆どの広告代理店は人間だけが資産であり、 単位時間あたりの売上を増やさない限り売上は伸びない という構造になっている。 そのままである以上、手離れのよいマス広告依存から逃れることはできない

今の総合広告代理店は大手企業しか相手にしていない

マス広告に依存した結果、社会には歪が出ている。

マス広告を打つことに経済的メリットが発生する大企業だけが、総合広告代理店に相談することになり、中小企業や資本関係のないスタートアップなどは全てゼロから自前で手探り状態である。

毎月、LINE@アカウントを運営し、SNSを運営する、という企業は、相談相手がいない。

残念ながらデジタル広告専業の代理店であっても、 人件費がネック である以上、この構造は変わらない。

「マス VS デジタル 」という視点の脱却

マス VS デジタル ではなく、パレートの法則 VS ロングテール

「売上の8割は2割の顧客が提供する」というパレートの法則以外の可能性が指摘されて久しい。

*1

アマゾンは少ししか売れない商品も確保することで売れ筋しか置けない店舗型の書店を駆逐した。

ロングテールビジネスの広告・マーケティングビジネス

実は既に「ロングテール」方式の広告・マーケティングビジネスがある。だがその前に「広告ビジネス」の概念を広げて俯瞰しなければならない。

広告・マーケティングの市場とは何か?

広告業界の社会的役割を俯瞰でみると、 生産者と消費者間の情報の偏りを是正していく ということである。

  • 「こんなに良い製品なのに誰もしらない」という課題を解決し、
  • 「こんな商品あったんだ!」という課題を解決する。

全てはこれに集約される。

  • ペイド広告
  • 自社メディア運営
  • ソーシャル上でのコミュニケーション
  • CRM
  • キャンペーン
  • 優良顧客のプレミアムなイベント
  • チャットボット
  • etc...

手段は違えどやっていることはたったその2つだけだ。

実は広告代理店というのは媒体の買付以外の仕事も沢山ある。調査もするしイベントもするしWebサイトも作る。

ロングテールの広告・マーケティングビジネス例
Web接客ツール

WebサイトをOne to Oneで改善しようとするものだ。

既に会員登録した人とそうでない人、店舗型であれば店主が顔を覚えていて、ご新規さんと顔馴染み客とで対応を変えるものだが、それをWebサイト上でも実現するものだ。

liginc.co.jp

チャットアプリ

チャットアプリはチャットアプリと認識していると潜在的価値を見過ごすことになる。中国ではWeChapでチケット手配もできる。広告主と生活者をサービスで繋ぐことができるのだ。*2

marketing.itmedia.co.jp

クリエイティブ制作支援
  • ロゴ作成
  • 動画作成

ferret-plus.com

markezine.jp

この分野はまだまだ実用段階にはないもの、Adobeのツールが年々進化するのを見ると、クリエイティブ制作もいずれ職人からツールを使って夫々がそこそこのものを作る、という時代になるだろう。

人件費をテクノロジーで解決する

AIによって失業する人が生まれる、という見込みがある。裏を返せばテクノロジーが人間の代理をしてくれる時代である。

サブスクリプションで中小企業にマーケティング支援ツールを提供できるようにならなければ、広告代理店の業態転換は難しいだろう。


チャットアプリに関連して、FinTechという世界ではテクノロジーが変える未来様子が伺える。

*1:「面白い」と言っては失礼だが、フリーミアムの本を出した米国の出版社は倒産した、という噂がある。この本はロングテールについてはわかり易く説明してあるが、フリーミアムモデルという考え方は情勢を見誤っているのでそこを割り引いて読んで欲しい

*2:LINEも当然同じことができるが今は導入コストが高く大手企業向けである

成熟した社会に於けるブランド

「ブランドとは何か?」と尋ねられると多くの人が、牛の焼印の話をするだろう。 そして、その次はブランドエクイティなどの話をして、ブランド力は価格に添加できるものだ、という話になる筈だ。

ところで、これはいつまで通用するモデルなのだろうか?

フェラーリはチューリップではないか?

ブランドの代表例としてフェラーリを挙げる人は居るだろう。フェラーリは広告を一切しないのにブランド力がある、と言われる。しかし一方で、フェラーリの何が一体魅力であるか知っている人は居るだろうか?

  • 赤色がいい
  • スポーツカー
  • 何かカッコイイ

フェラーリときいて連想するのはそんなところではないかと思う。

しかし、このいずれもが 「みんなが良いと言っている」 に過ぎない価値である。 ボルボであれば「頑丈である」という機能的価値がある。 トヨタであれば「燃費が良く、故障が少ない」という機能的価値がある。 しかし、「赤色」や「スポーツカーの流線型」などの感覚的価値は機能的価値と異なって、「みんなが良いと言っている」という周囲の評判に支えられているに過ぎない。

昔、「チューリップバブル」というものが存在した。

何故か急にチューリップが人気になり、チューリップの相場があがり、そして下落した。 「みんなが良いと言っている」おかげで、機能的価値は微塵も変わらないまま値段が上がった。

私には、起きている現象がフェラーリもチューリップも同じに見える

大衆が消えつつある

マス広告が効かなくなってきた、と言われ始めたのはもう10年前だ。

その頃から、ラジオ/新聞は高齢者向けメディアに変わり、 テレビは未だ圧倒的なマスメディアではあるが以前ほどには若者に力はない。

価値観が多様化した結果、若者みんながスキー場に行く時代から、野外フェスに行く人、スポーツ観戦に行く人、社会貢献活動をする人、など様々に分散した。

「みんなが良いと言っている」ということの価値が相対的に重要ではなくなってきた。

流行語大賞も本当に流行したのかどうか、なんだかよくわからない、という言葉が増えたのではないだろうか?

「ブランド」はどうなるのか?

マスメディアを見ない人が増えても、大量消費社会が終わっても、広告業界は困らない。

ニッチなメディアに広告をし、ターゲティングした相手に適切なメッセージを与えられば心は動く。 効率的なマス広告の売上が減った分、手間が増えて利益率は下がるかもしれないが、 情報の伝達が必要である以上、広告は必要であり、仕事はなくならない。

しかし、「みんなが良いと言っている」という価値がなくなったとき、「ブランド」はどうなるのだろうか?

例えばiPhoneの寿命

iPhoneはデビュー当初圧倒的に見えた。Androidはすぐに登場したが初期のGalaxyは酷い挙動であった。 ところが、Galaxyはデザイナーも刷新して売れるようになり、巨大マーケットの中国ではXiaomi、HuaweiOPPOなどが勢力を伸ばした結果、Androidはシェアを順調に伸ばしている。

www.kantarworldpanel.com

日本では何故か韓国嫌い・中国嫌いが多いこととWikoのような企業が現れないためか、未だにiPhoneがブランド力があるが 世界的な流れを見ると時間の問題だろう。

「みんなが良いと言っている」だけで機能的価値がないものはブランドにならない。

Googleの「リスティング広告」という概念は革命的であった

リスティング広告というのは、興味が顕在化した人だけを狙うという広告である。 「知って欲しい人にだけ知って貰えばいい」という画期的な広告システムであり、今のターゲティング広告というものは全てこのリスティングから始まっている。

一方で、レガシィな広告代理店は、大衆向けの広告を作ることだけを長く仕事としてきたため、未だにこの発想に追いついていない。

知って欲しい人だけが知っていれば良い商品に対して、「みんな」にウケるように全然異なるコミュニケーションをしてしまう。 著名なタレントを映画の吹き替えタレントに使ってマスメディアの露出をはかる、という手法は変わらない。

「みんな」からの脱出

嘗て、「みんな」というワードは強力だった。

  • 「みんな」が欲しいファミコンが欲しい。
  • 「みんな家を買う」から家を買う。
  • 「みんなトレンディドラマを見る」

しかし今はそういう消費はしない。

例えばゲームの場合

今は「みんなが欲しい」からゲームを買うのではない。 「友達が参加してるからこのソーシャルゲームをやると一緒に楽しめる」からそのソーシャルゲームを選ぶのだ。 単独で黙々とやるゲームを「みんなが欲しがっているから」というだけの理由ではもう買わない

「ブランド=イメージで売ること」という発想をやめる

今の時代、売れているものには理由がある。「みんなが良いと言っている」では売れない。

みのもんたがテレビで紹介したら殺到し、何となくそれを見て買う人が更に殺到する、などというモデルは通用しない。 未だにそんなことを戦略PRだと称しているPR屋もどきがいたら、今すぐやめた方がいい。 バズは一過性でしかない。

「あの商品はブランドがあるからなぁ」と漠然としたことを言う人がいたらその人は思考が20世紀で終わっている。

「何故その人は買ったのか?」を考察するように問いを与えるべきだ。 何かしら機能的価値か、或いはその人にとって特別な理由があって買っている。

「みんなが欲しがっているよ!」という空気を作ろうとする広告クリエイティブは、今後みかけることは減っていくだろう。

エア・フランス(エールフランス)の広告を見ると如何にデザイナークリエイターが重要かわかる

最近この広告によくヒットします。自分はテレビが家にないので記事を見ているときにスクロールしていくと映像が流れ出してマウスオーバーすると音が出てくる、というパターンです。


Air France - 自宅にいるようにくつろいで (30s)

しかしこの動画、よくよく考えるととても重要な、日本の広告業界のある種の課題を浮き彫りにしているものでもあります。

訴求内容を抜粋してみる

訴求されている内容を字に起こすと以下です

  • 機内についてすぐにゆったりできる/くつろげる
  • 一流の料理や和食から好きなものを選べます
  • 日本語の機内誌があります(動画内のナレーションは”日本語のエンターテイメント”)
  • 寝るときも安心。
    • プライバシーが保たれて
    • フルフラットのベッド

そして、「自宅のようにくつろげる」という締めのコピー。

ところでこれ、上記の訴求ポイントだけオリエンされたら、めっちゃ辛くないですか??

ナレーションのテキストだけ読むと、たいした差別化ポイントではありません。ファーストクラス(乗ったことないですけど!)であれば、どの航空会社もゆったりしているでしょうし、食事も色々あるでしょう。日本語の機内食があるのかどうかはわかりませんが、あるんでしょう。

このような訴求ポイントのメモ書きを貰って、普通のマーケッターなら頭を抱えるはずです。

思考実験

凡人営業がよく知っている映像制作会社に発注する場合

上記オリエンを貰ったとして、凡人の営業が映像制作会社のプロデューサーにオリエンして作ると、恐らくこんなフィルムになります。

  • 機内を実際に撮影して、座席が一番広く映る角度を探し、「くつろげる」「ゆったり」を説明する
    • 場合によっては、座席と座席の距離を「__cm」と矢印と共にテロップを映像にのせる。
    • 一步頑張って、抽象空間で前の座席と後ろの座席を置いて、当社比で何%も広くしました!と座席の距離を広げるシーンを撮る
  • どんなに沢山の料理の種類が選べるか?ジャンル名を並べて文字で圧倒させたり、料理の鮮やかな写真を撮ってスライドショーにする
  • 機内誌は日本語版もあるよ!とタレントさんにニコパチさせる
  • 寝るときにどうプライバシーが確保されているのかファクトを集めて絵に落とす。
    • 何なら、「○○もついて、○○もついて、更に安心!」なんて言っちゃう

etc…

極めて説明的な、フィルムというよりも説明動画になることは用意に想像できます

マーケッターが入ってアドバイスする場合

凡人の営業だけではこなせない!とマーケッター的な人を入れたとします。一般的なアプローチだと以下のようになるでしょう。

  1. 他社のサービスを確認する
  2. エア・フランスの差別化ポイントを探す
  3. 場合によっては乗って確かめてみて何か他と圧倒的に違うところはないか?探す
  4. ファンの声をソーシャルやアンケートや調査から集めて、何が支持されているか?を改めて調べる。
  5. 例えば、フルフラットのベッドの寝心地が本当に良いし、支持している人も多い!と判明して、それを全面に出す
  6. フルフラットベッド訴求メインの動画制作を制作会社にオリエンし、様々な案を作る

訴求対象が一つに絞られたことで映像制作会社もちょっと腕の見せ所が出るでしょう。もしかしたらフカフカの象徴のようなものを探してアナロジーにするかもしれませんし、「家のベッドより快適!」とか、「寝ている間にもう着いちゃった!」みたいな、色んな方向を探って、もしかすると中にはスマッシュヒット動画もあるかもしれません。

しかし、エア・フランスのブランドイメージに残るのは、”なんかベッドが気持ちいいらしい”だけです。

クリエイター的素養の人が必要な理由

クリエイティブディレクター/アートディレクター/デザイナーといった人が入っていたらどうでしょうか?

彼等の中には、営業やマーケッターの持っていない引き出しがあり、訴求ポイントの整理や再解釈といったことに無駄な時間を使わず、この広告のような美しい映像と”あっ、エア・フランスなんか良さそう”というブランドを残せるのです。

  • オシャレなカラートーン
  • 擬似空間で座席を一つに絞って表現する
    • これでくつろげる広さが、ウソですが、伝わります
    • コートを投げ捨てて勝手にフックにかかるようなシーン、これもウソですが、自宅のようにくつろげる、を象徴的に表現できています。
  • シームレスに繋がったように感じる映像
    • 足をぽんと叩くと変わるスリッパ
    • 枕とともに倒れ込んだり、かってに布団がかかったり、(最近は凄い撮影技術ですね。)
  • 直接的でない表現
    • 和食もオーダーできるよ、ということの為に、星型の寿司を窓の外の景色から取り出させる。
    • フランス語の機内誌が一瞬で日本語に変わる。

このコンテを思いつけるのはなかなかの才能ではないかと思います。少なくとも営業の私はそう思います。

一級のクリエイターであれば、マーケッターのように訴求ポイントを無理に差別化させたりしなくても、カラートーンで幾らでも魅力的に見せたり、ちょっとしたアナロジーで良い感じに見せたり、という 引き出し が頭の中にあるので、変に訴求ポイントを捻じ曲げることもありませんし、営業のように全部を説明ビデオのようにしてしまうといったブランド破壊行為にも陥りません。

全ての役割をデザイナーに負わせるのは限界がありますが、やはりこういう事例を見るとデザインの素養があるかないか?というのは、今後のマーケティング担当者には避けられないポイントだと感じました。

AIの可能性について

おまけですが、最近こんな記事が話題になりました。

itpro.nikkeibp.co.jp

まだまだ本格運用は先なのかもしれませんが、

AIによって人間が勉強する以上の大量の引き出しを持たせる

ということができたら、叩き台やアイデア出しに貢献してくれるのではないでしょうか?

クリエイターの素養がない人にとってはある種、協力な外部の協力者が現れたと考えても過言ではありません。例えば既にテクノロジーが広告代理店マンの作業の代理をしてくれているケースがあります。

  • 広告在庫のマッチング(主にWeb)
  • 競争入札による値付け(主にWeb)
  • 調査やデータの分析(かなり昔から、ボタンやコードだけでクラスター分析できます)

クリエイティブな分野でも、ロゴを勝手に作ってくれるサイトだとか、広告賞を勉強してコンテを出せるマッキャンエリクソンのロボだとか、徐々に増えています。人間の手の届かないところ或いは人によっては苦手なところを上手く補完してくれると良いですね。

univ.peraichi.com

persol-tech-s.co.jp

kojmart.com

広告代理店社員にとっての古典

最近広告界隈で非常に良いと思う本に何冊か出会いましたが、どの本をみても言及されている名著・古典というものはあるものです。営業職・マーケッター職・クリエイター職、いずれのセクションの配属であっても、広告主と最低限同じレイヤーで話せなければ相談相手とは思って貰えないので、早々に読んでいた方が良かったなぁと後悔したことがあるものもあります。

広告業界の古典4冊

オグルヴィ「「売る」広告」』

一般的に言われていることはほぼ全てこの本で網羅されていると言っても過言ではありません。

「タレントを不用意に使うな、商品をちゃんと売れ」といった、広告主にとっては当たり前のことなのですが、広告代理店側にはミーハーな人やいい加減な人が集まりがちなので、ただ単に好感度は高いけど全く商品が売れることには貢献しない広告クリエイティブというものを作ってしまいがちです。本書で彼が述べていることは常に意識した方が良いでしょう。*1

という本もあり、この本も刺激的なのですが、有名なビートルの広告についてなど、事例が多いのは『「売る」広告』の方ですので、それの方が実践的かつ優先度は高いです。一方で、30代までは毎日休む間もなく勉強している筈だ!というお言葉は確かこっちの本だったのではないか?と思いますが、休日ちゃんと本を読もう!と思いなおしたのは彼の言葉がきっかけです。

シュガーマンマーケティング30の法則』

ダイレクト広告系の人ですが広く応用できる上に、本質的なことは既にこの時代に議論しつくされているのですから、先人の知恵を借りるべきでしょう。

「顧客はまず商品を感覚で納得し、その後に理屈を求める」などは、今や行動経済学のシステム1、システム2などで発見されたことかのように言われていますが、本書で既に述べられています。商品のベネフィットを考えるのは出発点としては重要ですが、感覚的な判断、或いは情報に基づく直観というもので先に買う買わないは決めてしまうので、感性は大事だということです。

例えば、iPhoneは使い易いのだ、洗練されているのだ、と言い張る人は多いでしょうけれど、使ってみると今のAndroidの方がUIは使い易いですし、何よりWindowsと最悪の愛称であるiTuensから解放されるだけでも随分とストレスフリーです。でも多くのiPhoneユーザーにとって、いくら理屈でAndroidをすすめられても、直観的な広告の美しさでiPhoneをスマートに感じている人は、心は動かないでしょう。

『目標による広告管理』

通称、DAGMAR。日本ではややマイナーなのですが、これを読んだことがない人(本書の内容を会得していない人)は、広告のマーケティングのスタート地点に居れていません。

新版 目標による広告管理―DAGMAR(ダグマー)の新展開

新版 目標による広告管理―DAGMAR(ダグマー)の新展開

質と量を別々に管理する、より細かくいうと、広告クリエイティブによる態度変容の効果と、メディアによるリーチの効果とを別々に把握し、評価する、という話です。科学的アプローチができている人にとっては当たり前のことかもしれませんが、文系出身者が大半を占める広告業界では、これができていない人がとても多いのです。

特に重要なのが、「ターゲットを明確にし、具体的に何人にアプローチするのか?をプランニング時点でちゃんと決めろ」という指摘です。広告賞を獲りたいという欲求が強いクリエイターは、ついつい「とても面白い企画かもしれないけれど、それはリーチしないよね?」という企画案を出しがちです。或いは、マーケティング職でも、そのメッセージ・コンセプトは正しいけれど、もっと予算があるときにやらないとダメではないですか?というコアメッセージを作りがちです。広告主は、幾ら投下しどれだけリターンするか?を考えているのです。

『急に売れ始めるにはワケがある』

どちらかというと社会心理学的な本です。

急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則 (SB文庫)

急に売れ始めるにはワケがある ネットワーク理論が明らかにする口コミの法則 (SB文庫)

六次の隔たり」についても詳細に分析されています。バズだ!バズだ!と言いながらも、実はちゃんとコミュニティどうし横断して広める人がいないと途中で途切れます。バズったからいいや!程度にバズマーケティングを捉えている人は理論から見直した方がよいでしょう。

最近の良い本

この数年で良かったなと思う本です

『確率思考の戦略論』

元P&Gの人の本で、とても参考になります。

ディリクレ分布をディリシュレーと呼んでいたり、独特なところはありますが、広告を幾ら投下すればいいのか?という基礎的なことを考える上で重要です。広告代理店側は、広告主に「先ず予算を決めて下さい」とマーケティングのスタート地点で協力することを避ける場合がありますが、必要な予算とリターンがいい加減に前年比で決まってしまっていては、全くマーケティングにはなりません。

数学的なところがあって難しい本ですが、それは専門家に任せるとして、「幾らかけて、いくらリターンがあるのか?」は常に意識しておかないと議論がかみ合わないでしょうし、報告書も作れません。アイデアはよかったけど、予算が少なかったですね!とキャンペーンが終わってから報告することに何の意味もありません。

『広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい』

ネット界隈では刺激的なことを言う人で有名な方が共著ですが、この本はかなりしっかりしています。

『DAGMAR』や『確率思考の戦略論』ともかかわってくる話ですが、一体何人にリーチさせるのか?によって、取れる手法というものは変わってくるのです。極端な話、日本人全員に知ってもらわないと目標数を到達できないぞ!となったら億単位の費用をかけてテレビスポットを打つのは外せないのです。ネットでちょっとバズるPR動画を打つのでは足りません。商店街を流行らせることと全国のスーパーマーケットに配架される商品を売ることは別次元です。そういう視点で施策を俯瞰し、予算感をイメージするには本書は最適でしょう。

マーケティング・サイエンスのトップランナーたち』

広告代理店がなぜ統計的知識が必要なのか?については、この本が一番良いかもしれません。

統計畑からマーケティングに手を伸ばしてきた人は、ブランディングなどの基礎的な問題点の視点が抜けていて、広告でA/Bテストをしましょう!といった小さな視点でしか議論できないのですが、本当の使い方は本書のように、マーケティング課題に対してどんな手法があれば解明できるのか?という知識です。

なかなかしっかりしている本で、「安心感があるというのは特徴がなくなってしまった商品が持たれるイメージだ」という点も正しく喝破しています。

例えば、本来は差別化し、セグメンテーションとターゲティングとポジショニングをしなければならないときに、「安心」「やさしさ」という言葉がアンケート回答から多かったので採用してしまう、というのは失敗なのです。クラスの中の全く目立たない子が「良い人だよ」と言われるのと大して変わらない状態で、これでは強く記憶されません。

そういった統計屋にはない視点が持てるという意味で本書はとてもバランスが良いですし、一方で確率的潜在意味解析を使うといった比較的最近の話題も網羅されています。

*1:ちゃんとしたクリエイターは著名だからタレントを使うのではありません。大前提として演技ができる役者でないとフィルムとして成立しない、という観点や、企画の中身とキャラクター性が重要な場合にタレントを使います。